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医療費控除で人間ドック費用は対象か?精密検査・再検査・PET検査は?

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 人間ドック費用は、料金がとても高いですね。
 でも、早期発見が大切ですから、たまには人間ドックを受けたいところです。

 人間ドックにかかった費用が医療費控除の対象になれば、その負担が軽減されるのですが、人間ドック費用は医療費控除の対象になるのかわかりにくいですね。

 そこで今回は、人間ドック費用についての医療費控除の扱いについて説明いたします。

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医療費控除|人間ドック費用は対象か?

人間ドックとは?

 人間ドックは、健康診断に比べて、項目数も多く、より専門的検査を行なうものです。
 人間ドック費用については、健康保険組合によっては補助があるところもありますが、基本的には自己負担になります。

 一般的な健康診断の検査項目に加えて、次のような検査を行います。
・目:眼底、眼圧
・呼吸器:呼吸機能検査
・腎臓:尿素窒素、クレアチニン、尿潜血、尿沈殿
・血球:血小板
・肝機能:TBil、LDH、ALP、TP、Alb
・すい臓:アミラーゼ
・尿酸
・腹部超音波
・便:便潜血
・上部消化管:内視鏡、透視検査

医療費控除とは?

 医療費控除とは、所得税・住民税の計算においては、自分や家族のために支払った医療費等の実質負担額が、1月1日から12月31日までの合計で10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額)を超えた場合には、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができる制度です。

 医療費控除の適用を受けるには、税務署に所得税の確定申告書の提出が必要になります。

 → 参考:医療費控除の確定申告|いくらから、医療費に該当する?還付額は?やり方

人間ドック費用の医療費控除における原則的扱い

 健康診断や人間ドックは、あくまで「病気の早期発見を目的」とするものであり、疾病の治療を行うものではありません。
 したがって、間ドック費用は、原則として医療費控除の対象とはなりません


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医療費控除|人間ドックで再検査・精密検査になったとき

 それでは、人間ドックを受診した結果、再検査や精密検査が必要とされた場合はどうなのでしょうか


 再検査・精密検査となった場合は、その結果次第で、人間ドック費用が医療費控除の対象になるのかどうかが決まります。

再検査・精密検査の結果、異常がなかった場合

 再検査や精密検査の結果、重大な疾病等が発見されなかった場合、治療を行っていませんから、その再検査費用・精密検査費用は、医療費控除の対象になりません。

再検査・精密検査の結果、異常が見つかった場合

 一方、再検査や精密検査の結果、重大な疾病等が発見され、引き続きその疾病の治療を行った場合には、例外として人間ドック費用は医療費控除の対象になります。

 なぜ、同じ人間ドック費用でも、異常が発見され治療をした場合には医療費控除の対象になるのか、というと、その人間ドックは治療に先立って行われる診察と同様に考えることができるという考え方なのです。

 再検査や精密検査で「重大な疾病」が見つかった時には、再検査費用や精密検査費用だけでなく、健康診断費用や人間ドックや費用も遡って医療費控除の対象になる、ということです。

 なお、人間ドックで異常が見つかった場合でも、引き続き治療をしなかった場合には、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができなくなりますので、医療費控除の対象とはなりません。

人間ドック費用が医療費控除の対象になる重大な疾病とは

 このように、人間ドッグで重大な疾病が見つかると、人間ドック費用も医療費控除に対象になるのですが、「重大な疾病」とは何をいうのでしょうか。

 税制では「重大な疾病」とはどこまでをいうのかを明らかにしていません。

 一般的に考えて、次の病気は間違いなく「重大な疾病」に該当するでしょう。
・がん ・高血圧 ・心疾患 ・脳血管障害

 このほかにも、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病も「重大な疾病」で該当するでしょう。
 趣旨から考えれば、人間ドックの結果、異常が見つかり、すぐに治療に入れば、かなり広い範囲で対象になると考えます。

 日本人間ドック学会では、次の判定区分を設定しています。

   A:異常なし  B:軽度異常  C:要経過観察・生活改善  D:要医療
 
異常なし 基準範囲内です。ただし、以前のご自身のデータと大きく変化がある場合は、気をつけたほうがよいこともあります。
軽度異常 問題ない程度の軽い所見、もしくは基準から少し外れているものの心配ない程度の所見です。健診で経過をみていけばよいでしょう。
要経過観察 軽度の異常が疑われます。急いで精密検査をする必要ない程度ですが、経過をみる必要はありますので、1年後もしくは指定された時期に再検査を受けましょう。
生活注意 軽度の異常があります。生活習慣に注意し、1年後もしくは指定された時期に再検査を受けましょう。
D1 要医療 異常があります。生活習慣や体調管理に注意し、指定された時期に再検査を受けましょう。改善がないようならば詳しい検査やお薬での治療の検討が必要となります。
D2 要精査 詳しい検査が必要ですので受診してください。
治療中 すでに治療(通院)されている場合です。関連項目について治療している場合にも判定されることがあります。

「D1:要医療」判定がされれば、医療費控除の対象となると考えていいでしょう。


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医療費控除|PET検査費用は対象になるのか?

 次に、PET検査費用は、医療費控除の対象になるのでしょうか?

PET検査とは?

 「PET検査」とは、ポジトロン・エミッション・トモグラフィーの略で、陽電子放射断層撮影のことです。
 簡単にいえば、最新のがんの検査のことです。

 PET検査費用は、施設ごとに異なりますが、10万円弱から15万円ほどかかります。

 このPET検査は、どの病院でも受けられるわけではありません。PETがある施設に限られます。

PET検査費用は、医療費控除の対象になるのか?

 PET検査費用は、医療費控除においては、人間ドック費用と同じ扱いになります。

 したがって、PET検査により異常が見つからなかった場合や、異常が見つかっても引き続き治療をしなかった場合には、PET検査費用は医療費控除の対象にはなりません。

 一方、PET検査により”がん”が見つかり、引き続きがん治療を受けた場合には、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、PET検査費用は医療費控除の対象となります。


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まとめ

 人間ドック費用やPET検査費用が医療費控除の対象になるかどうかについて説明してきました。

 簡単にいえば、検査結果によって医療費控除になる・ならないかが異なります。

 検査結果によって医療費控除の対象になるかどうかを正しく判断し、医療費控除の申告をしましょう。

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【投稿者:税理士 米津晋次





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