ゴルフのプレー代に特別な税金がかかっているのを知っていますか?
「ええっ!知らなかった」という人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、この特別な税金である「ゴルフ場利用税」について説明しましょう。
ゴルフに税金|ゴルフ場利用税とは
ゴルフ場利用税の概要
ゴルフ場利用税とは、地方税法の規定に基づいて、ゴルフをプレーする際にかかる税金(都道府県税)です。1950年(昭和25年)に「娯楽施設利用税」として創設されました。
ゴルフ練習場はゴルフ場に該当しませんので、ゴルフ練習場を利用した場合は、ゴルフ場利用税の課税対象とはなりません。
ゴルフ場利用税の徴収・納税
ゴルフ場の利用者から徴収したゴルフ場利用税は、ゴルフ場の経営会社が毎月分まとめて翌月末日までに都道府県税事務所へ納税します。なお、ゴルフ利用税は都道府県税ですが、税収の70%はゴルフ場が所在する市町村に交付されています。
ゴルフに税金|いくら?なぜかかるのか?
ゴルフ場利用税はいくらなのか
ゴルフ場利用税の税額は、一定ではありません。ゴルフ場ごとに税額が異なります。このような税金は珍しいですね。
ゴルフ場の等級を基準として、ゴルフ場の利用料金額とホール数によって都道府県がゴルフ場ごとに決定します。
ゴルフ場の等級
ゴルフ場利用税額の基準となるゴルフ場の等級は1級から9級まであり、等級ごとのゴルフ場利用税は、次のとおりです。(税額は、1人1日)1級:1,200円 | 2級:1,100円 | 3級:1,000円 |
4級:950円 | 5級:850円 | 6級:800円 |
7級:750円 | 8級:650円 | 9級:450円 | /tr>
たとえば、兵庫県の昭和36年にオープンしたよみうりカントリークラブのゴルフ場利用税は1200円、帝王ジャック・ニクラウスが設計した茨城県のPGM石岡ゴルフクラブ(旧石岡ゴルフ倶楽部)のゴルフ場利用税は900円、名古屋地区では、中日クラウンズが開催される名古屋ゴルフ倶楽部和合コースのゴルフ場利用税1150円となっているようです。
また、同じゴルフ場であっても、季節料金の設定により、負担していただく税額が異なる場合があります。
ゴルフ場利用税の非課税・軽減
ゴルフ場利用税は、利用者や利用状況により、非課税又は軽減されます。ゴルフ場利用税の非課税
次の利用者の場合には、ゴルフ場利用税は非課税となります。(該当することがわかる身分証明書等の提示が必要です)1 | 18歳未満の者 |
2 | 70歳以上の者 |
3 | 障害者 |
4 | 学生(学校の教育活動として校長が証明する場合に限ります) |
ゴルフ場を利用する日に、身分証明書を忘れると非課税の申し出ができませんのでご注意しましょう。
ゴルフ場利用税の軽減
次の利用の場合には、ゴルフ場利用税が1/2に軽減されます。(該当することがわかる身分証明書等の提示が必要です)1 | 65歳以上70歳未満の者< |
2 | 特定の競技会における利用 (国体や(財)日本ゴルフ協会、地区ゴルフ協会が主催する競技会) |
3 | 早朝など利用料金が通常の半額以下に軽減されている場合 |
ゴルフ場利用税がなぜ課税されるのか?(目的・趣旨)
ゴルフは贅沢なスポーツ
なぜゴルフの利用する際にだけ、ゴルフ場利用税のような特別な税金がかかるのでしょうか。まず、いまだに「ゴルフは贅沢なスポーツだ」「金持ちしかやらないスポーツだ」という考え方があるからです。
日本においては、ゴルフ場の利用料はほかのスポーツと比較して高価であり、ゴルフ場利用者には、高い担税力があるはず、という考え方によるのです。
ゴルフ場への道路整備や維持管理等の負担
また、ゴルフ場に関する次の費用が、自治体にとってかなりの経済的負担になっている、というのもゴルフ場の利用にゴルフ場利用税を課税する理由とされています。1 | ゴルフ場へのアクセス道路整備や維持管理費用 |
2 | ゴルフ場のごみ処理、ゴルフ場への救急サービス、消防サービス費用 |
3 | ゴルフ場ができたことによる地すべり対策、洪水対策の費用 |
4 | ゴルフ場建設による環境対策や、農薬・水質調査費用 |
ゴルフ場利用税が貴重な財源になっている
ゴルフ場利用税の税収は、その税収の70%が交付金として支給される市町村にとっても貴重な財源となっています。特に、財源が乏しく山林原野が多い市町村にとっては、ゴルフ場利用税の交付金が貴重な財源になっていて、地域振興には欠かせないものになっています。
たとえば、総務省の資料によると、2019年(令和元年)度においては、全国トップの千葉県市原市のゴルフ場利用税交付金は、6.0億円にも及んでいます。
また、平成25年度の京都府笠置町においては、ゴルフ場利用税交付金が地方税収の27.8%を占めるようになっています。
このような貴重な財源となっているため、地方自治体からは、たとえば次のようなゴルフ場利用税の堅持を訴える要望が国にされています。
・全国知事会「平成27年度税財政等に関する提案」(抄)(平成26年10月)
・全国市長会「平成27年度都市税制改正に関する意見」(抄)(平成26年9月)
・全国町村会 「平成27年度政府予算編成及び施策に関する要望(重点事項)」(抄)(平成26年7月)
・全国過疎地域自立促進連盟 「平成27年度過疎対策関係政府予算・施策に関する要望」(抄)(平成26年6月)
ゴルフ場利用税の廃止運動
一方、このゴルフ場利用税に対しては、廃止運動がおきています。廃止すべき理由として、次の主張がされています。
スポーツに課税するのはおかしい
急速に高齢化社会を迎えつつあるわが国にとって「余暇活動の充実」や「健康増進」は非常に重要なテーマです。そんな状況の中、ゴルフは、高齢になっても行える格好の生涯スポーツとしてすでに多くの人に親しまれています。
また、国体で正式種目として採用されていますし、2016年のリオ・デ・ジャネイロ五輪から、ゴルフは正式競技として復帰したことは、ゴルフはスポーツであり、単なる遊興でないということを証明しています。
ゴルフ場全体の入場者は減少しているにも関わらず、非課税入場者だけが増加を続けているということは、ゴルフ場利用税の存在が、ゴルフというスポーツへの参加を阻害しているのではないでしょうか。
もはやゴルフは贅沢スポーツではない
現在では、ゴルフの競技人口は約1,000万人になっていて、老若男女に愛されるまさに国民スポーツとなっています。そこには、金持ちの「担税力」は見いだせません。
地方自治体の経済的負担はじつは少ない
ゴルフ場へのアクセス道路に関する費用について、いまや、多くのゴルフ場への道路は、じつはゴルフ場側が作って自治体に寄付され、それが住民の生活道路として活用されています。ごみ処理費用についても、ごみは廃棄物処理法にのっとってゴルフ場が有料で処理しています。
救急、消防費用については、ゴルフ場だけが受けているものではありません。
地すべり対策、洪水対策については、ゴルフ場自らが実施しています。
さらに、環境対策については、ゴルフ場開発で森林50%を残し、残りの45%は芝地としていますし、農薬・水質調査もゴルフ場が費用を負担して行っています。
逆に、ゴルフ場による新たな雇用の創出や物品販売などの事業が発生し、地元経済の活性化に大きく貢献したり、、本来であれば山林原野である場所がゴルフ場となったことで、固定資産税の収入増加に寄与しているのです。
ゴルフに税金|仕訳は?消費税の扱いは?
ゴルフ場利用税の消費税の扱い
酒税、たばこ税などの個別消費税は、消費税がかかります。それは、メーカーなどが納税義務者となって負担する税金であり、その販売価額の一部を構成しているという考え方によります。
これらは、税金に消費税がかかるという「二重課税」になっています。
それに対し、ゴルフ場利用税には消費税はかかりません。
それは、ゴルフ場利用税の納税義務者は、ゴルフ場利用者となっているからです。
ゴルフ場利用税の仕訳
ゴルフ場利用税の勘定科目
ゴルフ場利用税は、確かに税金の一つですが、だからといって単純に「租税公課」の勘定科目は妥当ではありません。それでは、どの勘定科目となるのでしょうか。その答えは、ズバリ!「交際費」です。
それは、交際費が、得意先等に対する接待などのために支出するものであり、たとえ税金であっても、その目的により判断するものだからです。
それでは、社員とゴルフに行った場合は「福利厚生費」なのでしょうか。
確かに、福利厚生関係の費用については通常は「福利厚生費」で処理します。
しかし、税務では、ゴルフはまだ福利厚生行事として一般的でない、という考え方となっています。
また、ゴルフは通常、従業員全員で行くものではありません。
福利厚生費は原則として、従業員全員が等しく享受できるものである必要があります。
このような意味でも、社員とのゴルフは税務上は「福利厚生費」としては認められず、たとえ社員が相手でも「交際費」となります。
今では、ゴルフプレー代も安くなり、社員旅行に行くよりも安く済むことも多いのではないでしょうか。
それなのに、まだ「特別扱い」とは、確かにおかしいですね。
ゴルフ場利用税には消費税がかからない
先に説明したように、ゴルフ場利用税には消費税がかかりません。したがって、消費税がかかるゴルフプレー代などとは区別して仕訳する必要があります。
また、緑化協力金やゴルフ振興基金など、ゴルフ場利用税のほかに消費税の課税対象外になっているものもあります。
ゴルフ場利用税を含むゴルフプレー代の仕訳例
・プレー代、ロッカー代、飲食代など:「交際費」(消費税課税仕入)・ゴルフ場利用税、緑化協力金:「交際費」(消費税対象外)
たとえば、
・ゴルフプレー代22,000円・ロッカー代550円・ゴルフ場利用税1,000円・飲食代3,300円・緑化協力金50円、合計26,900円の場合の仕訳は、次のようになります。
(領収書で確認します)
(借方) (貸方)
・交際費(課税仕入)23,500円 / 現金26,900円
・仮払消費税 2,350円
・交際費(対象外) 1,050円(ゴルフ場利用税+緑化協力金)
まとめ
今回は、「ゴルフ場利用税」について説明してきました。このような特定なものにかかる税金は珍しいです。
ゴルフをプレーするうえでは、特に「ゴルフ場利用税」を意識することもありませんが、プレー代等の明細に「ゴルフ場利用税」が表示されていたら、今回の内容を思い出してください。
また、経理処理では特に消費税の扱いに注意しましょう。