領収書に収入印紙を貼る場合には、割印(消印)をします。
しかし、
・この割印の意味は何なのか
・この割印には誰のどんな印鑑を使うのか
・割印の位置はどこにすべきか
・割印の正しい押し方はどうなのか
などについて、正しい情報を知らずに押している人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、領収書に貼る収入印紙への割印について、正しい情報をご紹介しましょう。
目次
領収書の収入印紙への割印(消印)
収入印紙とは?
収入印紙とは、契約書や領収書などの重要文書に印紙税を課税する際、その徴収のために利用される証憑のことをいいます。文書に課税することについては納得できないかもしれませんが、これは国の政策ですから仕方がありません。国側から見れば、優れたしくみです。
国が手数料を徴収するための手段としても使われています。
課税される文書に収入印紙を貼付し、必ず割印(消印)をします。
→印紙税の課税文書と非課税文書|基礎、課税・非課税の判断、節税策
領収書に貼る印紙税額
領収書の収入印紙には、いくらのものを貼ればいいのかは、領収書に記載された受取金額によって決まっています。<記載された受取金額と印紙税額>(1千万円以上は領略)
5万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 2000円 |
受取金額の記載のないもの | 200円 |
営業に関しないもの | 非課税 |
特に、5万円未満は収入印紙の貼付は不要ということを覚えておきましょう。
→印紙税額一覧表(国税庁、PDFファイル)
なぜ収入印紙に割印(消印)が必要なのか
印紙税の課税対象となる文書に印紙を貼り付けた場合には、その文書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければならないことになっています(印紙税法第8条第2項)。つまり、税法で決まっているから収入印紙に割印をしなくてはならないのです。
なぜ、割印をする規定になっているのかというと、収入印紙の再使用を防ぐためです。
割印が不要だと、一度貼られた収入印紙をはがして使用することが可能になるからです。
割印(消印)の代わりにサイン(署名)や手書きではいけないのか
印紙を消す方法は、印章又は署名によることになっています(令第5条)つまり、「印鑑か署名(サイン)による」ということは、印鑑ではなくて手書きの署名(サイン)だけでもOKだということです。
その署名(サイン)ですが、まず、自筆によらなければなりません。
また、署名として書く文字は、氏名を表すものでも通称、商号のようなものでも構いません。
さらに、一見して誰が割印(消印)したかが明らかとなる程度に署名することが必要とされています。
なお、鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるもので署名したものは、割印(消印)をしたことにはなりません。
割印の趣旨は、再利用を防止することですからです。
最近多い、消せるボールペンもその意味でやめた方がいいですね。
サインの代わりに二本の斜線で消すのはOKか
二本の斜線で消すだけではダメです。また、単に「印」と表示したりしたものも割印したことにはなりません。
二本線などだと、はがしてうまく線を合わせれば再利用することも可能だからです。
割印(消印)を忘れたらどうなるのか
収入印紙は、割印(消印)をしなければ、印紙税を納付したことにはなりません。うっかりして領収書に収入印紙を貼っただけで割印をしないで相手の方に渡した場合には、不充分なのです。
割印を忘れると後日、税務調査で指摘を受ける対象になってしまいます。
もし、税務調査で割印を忘れたことが判明した場合には、貼った収入印紙の額の3倍(過怠税)が課税されることになります。
領収書の収入印紙への割印は誰のどんな印鑑を押すのか
領収書の収入印紙の割印に誰の印鑑を押すのか?
収入印紙の割印は、代表者のものでなくては行けないのでしょうか?いえ、収入印紙の割印は、代表者でなくても、領収書の作成者、代理人、使用人、従業者の印鑑であれば、誰のものでも問題ありません。
誰の印鑑かが重要ではなく、割印が押してあることが重要なのですね。
領収書の収入印紙への割印(消印)にはどんな印鑑を押すのか?シャチハタ印は?
領収書には、角印や丸印を押すことが多いと思います。その場合に、収入印紙の割印も、同じ印鑑でないといけないと思っている人が多いようです。
しかし、割印は、収入印紙の再使用を防止するためのものですから、それに使用す印鑑は、通常印判といわれているもののほか、氏名、名称などを表示した日付印、役職名、名称などを表示したゴム印のようなものでも差し支えありません。
したがって、よく大事な文章には不適当とされているシャチハタ印でもOKです。
割印(消印)の位置は?
割印の位置は特に指定はありません。領収書と収入印紙にまたがって割印されていればいいのです。ただ、実際には、あまり変なところに割印してあると、見た目がおかしいですので、収入印紙の右か左の中央あたりに割印をすることが多いです。
契約者が複数人いる場合の割印(消印)
領収書ではそのようなことはありませんが、契約書で契約者が複数人いる場合があります。そのような場合は、その作成者のうち誰か1人の者が消せばよいことになっています。割印の趣旨は、再利用の防止だからです。
収入印紙が2枚ある場合の割印(消印)
収入印紙が1枚でなく2枚になることも稀にはあります。その場合の割印はどのようにすればいいのでしょうか。これも再使用防止の割印の目的に沿って考えてみればわかります。
1つの印鑑で2枚の収入印紙それぞれに割印してもいいですし、2枚の収入印紙を別々の印鑑で割印してもいいのです。
1枚が署名で、もう1枚が割印なんということでも、全く問題ありません。
収入印紙の割印(消印)を失敗したら
印紙への割印を失敗したらどうすればいいのか
割印がきれいに押せないときってありますね。特に印紙の下の紙の方に朱肉がほとんど写らないということがよく起こります。
印鑑のまわりの枠の部分だけになって、中の文字が抜けてしまうこともあります。
これでは、印紙への消印として有効にならないのか心配になります。
安心してください。割印の役割は、印紙の再使用を防止することでした。
失敗だと思っても、朱肉が写っていればいいのです。
割印(消印)の見栄えがひどかった場合
確かに、相手に渡すものへの印紙の割印が、あまりに見栄えが悪ければ、別の印紙にやりなおしたくなります。でも、そんなことまでする必要はありません。
写りが悪かったら、もう1回別の場所に割り印すればいいでしょう。相手もそれほど印紙の割印については気にしていないはずです。
2018年(平成30年)7月1日から収入印紙の様式が変わりました
収入印紙の形式(様式)が、2018年(平成30年)7月1日から変わりました。新しい偽造防止技術が導入されています。改正内容については、次の記事をご覧ください。
→2018年7月から収入印紙の形式が変更になります
まとめ
領収書に貼る収入印紙へ押す割印(消印)について正しい情報を説明してきました。これから、印紙への割印をする際には、説明した情報を思い出しながら正しく運用をしていただきたいと思います。
<参考>
→ 印紙の消印の方法(国税庁)
→ 印紙の契約書や領収書と印紙税(動画)(国税庁)
【投稿者:税理士 米津晋次】
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