年末調整で大学生の息子を扶養に入れたものの、後から息子のアルバイト収入が103万円を超えていたことがわかった、ということもあるかと思います。
また、奥様のパート収入が、12月が予想より多く、年103万円を少し超えてしまった、とか、配偶者特別控除申告書に記載したパート収入に差額が出た場合もあるかもしれません。
そんな場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
そこで今回は、年末調整の扶養に誤り・間違いがあった場合の対処法について説明しましょう。
目次
年末調整で扶養に誤り・間違いがあった場合の対処法|再年末調整
年末調整後の誤り例
年末調整後に判明する誤りの例としては、次のものがあります。1 | 配偶者を扶養として申告したものの、配偶者の給与収入が年103万円(所得金額48万円)を超えていた |
2 | 配偶者特別控除申告欄に記載した配偶者の所得と、実際の所得が異なっていた |
3 | 大学生の息子を扶養として申告したものの、息子のアルバイト収入が年103万円(所得金額48万円)を超えていた |
4 | 年末調整資料提出締め切り後に、子供が生まれた |
5 | 子供を夫と妻の両方で扶養に入れてしまった |
年末調整後すぐに誤りがわかった場合
12月に勤務先で年末調整を受け、その後、1月中に上記のような誤りが判明した場合には、勤務先へすぐに申し出れば、年末調整の再計算をしてもらうことができます。できるだけ早く勤務先に申し出ましょう。
翌年1月中の申し出であれば、勤務先は年末調整の再調整をする義務があるのです。
年末調整で扶養に誤り・間違いがあった場合の対処法|確定申告
翌年2月以降に誤りがわかった場合は確定申告
年末調整の申告誤りが翌年2月に入ってから判明した場合は、勤務先に年末調整の再調整をお願いすることはできません。でも安心してください。
その場合は、3月15日までに税務署へ所得税の確定申告をして訂正すればいいのです。
3月15日までに確定申告すれば、誤りに関するペナルティはない
3月15日までに所得税の確定申告をして、その中で年末調整の誤りを訂正すれば、何もペナルティーはありません。所得税確定申告で計算された不足税額を3月15日の期限までに納付すればいいのです。
勤務先にも全く迷惑をかけることはありません。
確定申告が初めての方は、次のページをご覧ください。
→確定申告が初めての方へ|確定申告の概要、必要なもの、手順など
年末調整で扶養に誤り・間違いがあった場合の対処法|扶養是正
年末調整の誤りが3月16日以降にわかった場合
年末調整で申告した扶養などの情報の誤りが、所得税確定申告の提出期限である翌年3月15日を過ぎてからわかった場合はどうすればいいのでしょうか。その対応法としては、次の選択肢があります。
(1)所得税確定申告の期限後申告を行なう
(2)何もしない
年末調整の誤りを期限後申告で訂正
確定申告が3月15日に間に合わなかった場合でも、所得税の確定申告をすることができるのです。このように申告期限後の申告を「期限後申告」といいます。
期限後申告の場合には、不足税額を追加納付するとともに、納付が遅れたペナルティーとして、延滞税を納付する必要があります。
所得税の追加納付後、しばらくすると税務署から延滞税の通知があります。
延滞税の金額は、次のようになります。
・追加納付すべき税額×延滞税割合×所得税確定申告の提出・納付期限である3月15日の翌日から追加納付した日数÷365日
延滞税の割合(利率)は、令和6年の場合には、納付期限から2ヵ月までは、年2.4%、2ヵ月経過後は、年8.7%となっています。
→【参考】延滞税とは?
→【参考】延滞税について(国税庁)
なお、所得税の期限後申告が早い時期にすれば、翌年6月からの住民税は、期限後申告が反映された税額になります。
所得税の期限後申告の時期が遅いと、住民税の計算に間に合わず、期限後申告前の税額の通知があった後、期限後申告による住民税額の訂正通知が勤務先を通じてあります。
年末調整の誤りをそのままにするとどうなる?勤務先に扶養是正通知
年末調整での申告誤りがわかったものの、何もしない場合は、秋頃に勤務先に税務署から指摘があります。指摘をうけた勤務先は、本人へ通知の内容を知らせるとともに、誤りの確認をします。
勤務先へ誤りの通知がきますので、気まずい思いをすることになりますよね。
そのような思いをしないためにも、そのまま放置することは避けてください。
なお、所得税の是正が終わるとしばらくして住民税も訂正になります。
住民税については通常、これから給与から控除される住民税額が増えることによって調整されます。
市町村から勤務先へ、今後の給与から控除する住民税額(不足分が加算になったもの)が通知されるからです。
家族手当の遡り徴収の可能性も
扶養の誤りの影響は所得税や住民税だけではありません。勤務先の給与で家族手当が支給されており、その支給基準が所得税の扶養と同じ基準である場合、扶養の訂正があると、家族手当も遡って支給停止になり、過払いとなった家族手当の返却を求められることもあります。
これはさらに気まずいですよね。
社会保険の扶養についても確認
扶養の誤りによる所得税や住民税の訂正方法は上記のとおりですが、社会保険の扶養から外れる可能性もあります。社会保険の扶養条件は、所得税や住民税と異なるので確認してください。
→【参考】被扶養者とは?(全国健康保険協会)
→【参考】被扶養者に異動があったときの手続き(日本年金機構)
まとめ
今回は、年末調整の扶養に誤りがあった場合の対処法について説明しました。誤りを防ぐためには、配偶者やお子さんの年間収入を年末調整前に確認しておきましょう。
また、年末調整後に誤りがわかった場合には、上記で説明しましたように、1月中にわかれば年末調整の再調整の依頼を、2月以降に判明した場合は、確定申告をすることをおすすめします。
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【投稿者:税理士 米津晋次】