会社から提出するように言われた年末調整関係書類。
その中でも「保険料控除証明書」は、細かくて記入する項目が多く、ぐちゃくちゃしていて、どこに何を書けばいいのかわかりにくいです。
そこで今回は、保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄について、最低限の記入欄とその記入方法を説明しましょう。
なお、平成29年分までは、配偶者特別控除欄と同一用紙でしたが、平成30年分からは、保険料控除単独の申告書になっています。
また、令和6年分からは、「保険金等の受取人」欄の「あなたとの続柄」欄がなくなりました。
目次
保険料控除申告書(小規模企業共済等掛金控除欄)の書き方・記入例|対象となるもの
保険料控除申告書の中の小規模企業共済等掛金控除欄は、用紙の右下にあります。(出典:国税庁。クリックすると拡大表示できます。)
保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄を記入するものは、限られています。
この小規模企業共済等掛金控除欄に記入できるものは、次のものです。
(1)小規模企業共済
(2)確定拠出年金(iDeCoなど)
(3)心身障害者扶養共済
小規模企業共済
小規模企業共済制度は、個人事業をやめたときや、小規模会社の役員を退職したときの退職金制度です。→小規模企業共済(中小機構・小規模企業共済)
加入できるのは、常時使用する従業員が20人(商業とサービス業(宿泊業、娯楽業を除く)では5人)以下の個人事業主やその共同経営者、会社等の役員の方です。
個人事業主は、もともと年末調整の対象外ですから、この小規模企業共済欄に記入するのは、会社等の役員や専従者の方が主になります。
確定拠出年金
確定拠出年金制度は、掛金が個人ごとに区分され、自己の責任において掛金運用の指図を行い、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度です。「日本版401k」とも呼ばれます。それよりも愛称の「iDeCo」(イデコ)と呼ばれる方が多いです。
この確定拠出年金には2種類があります。
◆企業型確定拠出年金
企業型確定拠出年金は、会社が制度を実施するかどうか決め、企業年金制度の一部として導入するものです。原則として会社が掛金を負担します。
→企業型DC(企業型確定拠出年金)ってなあに?(一般社団法人投資信託協会)
掛金の個人負担がある場合でも、掛金は給料から引かれていると思いますので、この保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄に記入する必要はありません。
◆個人型確定拠出年金
それに対して個人型確定拠出年金(iDeCo)は、確定拠出年金の仕組みを個人が任意で活用できる制度です。実際にやるかどうかは個人が選択します。
掛金はすべて個人が負担します。
→iDeCoってなに?(iDeCo公式サイト)
個人型確定拠出年金でも、掛金が給料から引かれている場合には、この保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄に記入する必要はありません。
心身障害者扶養共済
心身障害者扶養共済は、障害者を扶養している保護者が毎月一定の掛金を納めることにより、保護者に万一(死亡・重度障害)のことがあったとき、障害のある方に終身一定額の年金を支給する制度です。→心身障害者扶養共済制度について(愛知県)
保険料控除申告書(小規模企業共済欄)の書き方・記入例|小規模企業共済
保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄の1行目「独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金」欄に小規模企業共済について記入します。「小規模企業共済掛金払込証明書」を準備
独立行政法人中小企業基盤整備機構から送付されてきた「小規模企業共済掛金払込証明書」を手元に用意します。この「小規模企業共済掛金払込証明書」の提出が適用条件になっていますので、次の金額の記入が終わったら、保険料控除申告書の裏に貼付してください。
ただし、10月以降に加入された方や、10月以降に初回の口座振替になった方には、まだ「小規模企業共済掛金払込証明書」は送付されてきません。(翌年2月になります)
したがって、領収書か掛金が引落しになった通帳コピーを用意します。(保険料控除申告書の裏面に貼付します。)
なお、「小規模企業共済掛金払込証明書」を紛失した場合には、次のサイトを参考に再発行を依頼しましょう。
→ 掛金控除証明書(払込証明書)を紛失しました。再発行できますか(中小機構)
あなたが本年中に支払った掛金の金額欄
「あなたが本年中に支払った掛金の金額」欄には、「小規模企業共済掛金払込証明書」から金額を記入します。11月に送付される「小規模企業共済掛金払込証明書』には、掛金の月額しか記載されていません。
それを参考に、年内に払い込んだ掛金合計額を記入します。
10月~12月の払込については、掛金が引落しされた通帳のコピーを添付します。
また、9月までには掛金の支払がなく、10~12月に支払った場合には、掛金の領収書か掛金が引落しされた通帳から金額を記入します。
もし、その年に前納減額金を受け取っている場合は、その掛金合計額から前納減額金を差し引いて申告してください。
また、前年の未払掛金を今年に支払った場合は、その未払掛金の額を加算して申告してください。
保険料控除申告書(小規模企業共済欄)の書き方・記入例|確定拠出年金
保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄の2行目の「個人型又は企業型年金加入者年金」欄に、確定拠出年金について記入します。ただし、確定拠出年金の掛金が給料から控除されている場合は、記入は不要です。
「確定拠出年金掛金払込証明書」を準備
国民年金基金連合会から送付されてきた「小規模企業共済等掛金払込証明書 確定拠出年金(個人型年金)」を手元に用意します。この証明書の提出が適用条件になっていますので、次の金額の記入が終わったら、保険料控除申告書の裏に貼付してください。
なお、「小規模企業共済等掛金払込証明書 確定拠出年金(個人型年金)」を紛失した場合には、加入金融機関にお問い合わせください。
あなたが本年中に支払った掛金の金額欄
「あなたが本年中に支払った掛金の金額」欄には、「小規模企業共済等掛金払込証明書 確定拠出年金(個人型年金)」に記載されている「合計金額」を転記します。「本年9月までに払い込まれた金額」を転記しないでください。
保険料控除申告書(小規模企業共済欄)の書き方・記入例|心身障害者扶養年金
保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄の3行目の「心身障害者不要共済制度に関する契約の掛金」欄に、心身障害者共済について記入します。「掛金払込証明書」を準備
地方公共団体が発行した「掛金払込証明書」を手元に用意します。この証明書の提出が適用条件になっていますので、次の金額の記入が終わったら、保険料控除申告書の裏に貼付してください。
もし、「掛金払込証明書」を紛失した場合には、地方公共団体に再発行を依頼しましょう。
あなたが本年中に支払った掛金の金額欄
「あなたが本年中に支払った掛金の金額」欄には、「掛金払込証明書」に記載されている金額を転記します。QRコードも使えます
用紙右上のQRコードは、国税庁HPの「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」のページにリンクしています。ここでは、用紙の様式をダウンロードしたり、記載例を見ることができます。
動画による説明(国税庁)
国税庁が動画による「保険料控除申告書の記載のしかた」を公開しています。こちらも参考にしてください。
まとめ
今回は、保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除欄について、その書き方を説明しました。最初に説明したように、この欄に記入できるものに加入しているか、を判断することと、証明書の提出がポイントです。
この対象となるものは、掛金が全額所得控除されるものですので、記入もれだけはないようにしましょう。
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【投稿者:税理士 米津晋次】