所得税・住民税の医療費控除の適用を受けるためには、原則として領収書の保存が必要ですから、日頃から領収書の整理、保存が必要です。
でも、領収書を紛失した場合にはどうすればいいのでしょうか。
また、2017年分(平成29年分)からは医療費控除制度が変わりましたし、医療費控除を申告する際に、医療費の明細書への記載方法や、領収書のまとめ方など、不安なことが結構あります。
そこで今回は、医療費控除の領収書について説明いたします。
目次
医療費控除の領収書について|医療費控除を受けるには、領収書の保管が必要
医療費控除とは?
医療費控除とは、自分や家族のために支払った医療費等の支払額が、原則として年間10万円を超えた場合に、その超えた金額をその年の課税対象額から差し引くことができる制度です。医療費控除の適用が受けられると、所得税・住民税が安くなります。
なお、従来からの医療費控除制度で控除できる金額の上限は200万円です。
また、2017年分(平成29年分)から新設されたセルフメディケーション税制では、年間1万2千円を超えれば、控除を受けることができ、その控除限度額は、8万8千円となっています。
従来からの医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらか一方の選択となっています。
領収書原本の提出が不要になった|医療費控除
2016年分(平成28年分)までは、医療費控除の適用を受けるためには、医療費の支出を証明する書類(領収書など)については、原則として、確定申告書に添付して税務署に提出しなければなりませんでした。しかし、2017年分(平成29年分)からは、「医療費控除の明細書」を作成して確定申告書に添付することになり、医療費の領収書の提出は不要になりました。
「医療費控除の明細書」の代わりに、健康保険組合等から送付されてくる「医療費のお知らせ」を確定申告書と一緒に提出してもOKです。
「医療費のお知らせ」を医療費控除に使用する場合、自己負担額(加入者の支払額欄)について、市などの医療費助成を受けて自己負担がなかった場合には、除外する必要があります。注意しましょう。
→「医療費のお知らせ」を利用した医療費控除のやり方・注意点
医療費の領収書原本は、自分で保管が必要
医療費控除を受ける場合に、医療費の領収書を所得税の確定申告書に添付する必要がなくなったといっても、領収書を捨ててしまっていいということではありません。確定申告期限である翌年の3月15日の翌日から起算して5年を経過する日までの間は、医療費の領収書を自分で保管しなくてはなりません。
なぜかというと、税務署が医療費控除の明細書に記載した内容を確認するため、医療費の領収書の提示や提出を求める場合があるからです。
もし、その際に医療費の領収書の保管がされていなかった場合には、医療費控除が認められない可能性が高いです。
ただし、「医療費のお知らせ」に記載されている医療費については、領収書を保管する義務はありません。
治療を受けるための領収書がない交通費の証明方法
治療を受けるための公共交通機関を利用した交通費についても、医療費控除の対象になります。しかし、乗車券などは、領収書が取得できないことが多いです。そのため、交通費については、例えば次のように作成します。決められた様式はありません。
○月○日 通院 交通費 ○○駅-○○駅 ○○円 |
2019年(令和元年)分までは、領収書を提出することもできる
5年間領収書を保管することが不安な方については、経過措置として、2019年(令和元年)分までの確定申告については、「医療費の明細書」を確定申告書に添付しないで、従来どおり領収書を確定申告書と一緒に税務署に提出することも認められます。提出すれば、もちろん保管義務はなく不安が解消しますね。
税務署以外で領収書を必要とされた場合
生命保険会社など、税務署以外に医療費の領収書の提出が求められることがあります。その場合でも、出来る限り領収書の原本の提示にとどめ、領収書の提出をしないようにしましょう。
どうしても提出しなければならない場合には、コピーをとって、そこに提出日・提出先・提出理由を記入してそのコピーを保管してください。
医療費控除の領収書について|領収書を紛失した場合
医療費控除で必要だとわかっていながら、領収書を紛失してしまうこともありますよね。そんなときはどうすればいいのでしょうか。まずは病院等に領収書の再発行を依頼する
その場合は、まず、病院側に再発行依頼してみましょう。多くの病院では、「領収書の再発行はいたしません」としているところが多いですが、コンピュータ化している病院などは、領収書のかわりになる「領収額証明書」を発行してくれるところがあります。
有料になるかもしれませんが、ますは病院に問い合わせてみましょう。
「領収額証明書」のように1年分の合計額を1枚の紙で発行してもらう際には、但し書きなどに、「令和○○年分」などの記載があることを確認しましょう。
この記載がないと、発行日で判断され、実際に支払った日に支払ったと認められないこともあります。
病院等で領収書の再発行をしてもらえない場合
どうしても領収書を再発行してもらえない場合でも、税務署に説明して納得してもらえば控除対象になる場合もあります。家計簿などの記録をしっかりつけておきましょう。
医療費控除の領収書について|領収書の明細書の書き方・まとめ方
領収書の整理・まとめ方
まずは、発行日をチェックして、申告対象年のものでないものがあれば、除外します。次に、治療を受けた人ごとに分類します。生計を一にしている家族の分も医療費控除の適用を受けられます。
そして、同じ人の中では病院・薬局ごとに分類します。
最後に、同じ人・同じ病院の中では、日付順に並び替えます。
同じ人・同じ病院の領収書の単位で、ホッチキスなどでまとめておきましょう。
領収書に補足説明を追加する
例えば、室料差額については、原則として医療費控除の対象となりません。しかし、医師の指示によるものや、大部屋を希望していたがたまたま空きがなくて病院側の事情で個室に入ったような場合であれば医療費控除の対象となります。
これに該当する場合は、補足的にその旨を領収書に書き込んでおくといいでしょう。
また、一般の薬局で購入した医薬品についても、内容を追加で書いておくといいです。
領収書ごとの一覧表を作成する
整理した領収書について、1領収書1行の一覧表を作成します。分類したように、人ごと・病院ごと・日付順で記載します。
人ごと・病院ごとの小計を計算しておいてください。
エクセルなどの表計算ソフトを利用すると、小計も簡単に間違いなく作成できるのでおすすめです。
「医療費の明細書」を作成する
「医療費の明細書」を作成して確定申告書と一緒に税務署へ提出します。様式は、税務署が用意しています。従来からの医療費控除用の様式と、2017年分(平成29年分)から新設されたセルフメディケーション税制用の様式が異なるので注意しましょう。
→医療費の明細の様式はこちらから(確定申告様式ダウンロード)
まとめ
医療費控除をする際の領収書について説明してきました。健康で医療費がかからないことが一番ですが、多額な医療費がかかった場合には、経済的な負担が大きいですから、医療費控除の適用を正しく受けて、少しでも負担を軽減するようにしましょう。
【医療費控除関係記事】
・医療費控除の確定申告|いくらから、医療費に該当する?還付額は?やり方
・医療費控除の領収書はどうするの?(提出・保管は必要?紛失の場合など)
・「医療費のお知らせ」を利用した医療費控除のやり方・注意点
・医療費控除入院費|食事代・おむつ代・差額ベッド代は対象?保険金は?
・医療費控除|薬局で購入した薬代(風邪薬・絆創膏など)は対象になるのか
・医療費控除で人間ドック費用は対象か?精密検査・再検査・PET費用は?
・出産の医療費控除のポイント|検診・タクシー代、出産手当・出産一時金
・医療費控除|不妊治療費は対象になる?助成金は?高額交通費は?
・歯科の自由診療(自費診療、保険外)は対象になるのか?
・医療費控除で歯科矯正は対象?(子供の場合、大人の場合、書き方)
・医療費控除|介護保険居宅・施設サービス、介護ベッド・用品代、レンタル等で対象になるもの
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【投稿者:税理士 米津晋次】
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