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住宅ローン控除|連帯債務の場合の計算(持分、借入割合別)と注意点

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夫婦がマイホームを買った場合に、住宅ローンを夫婦の連帯債務とすることが多くあります。
このような場合には、名義が共有か単独かなどにより、住宅借入金控除(住宅ローン控除)の計算が異なりとても複雑です。

そこで今回は、連帯債務の場合の住宅ローン控除について説明しましょう。

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住宅借入金控除|連帯債務のある場合

住宅借入金控除(住宅ローン控除)概要

住宅借入金控除(住宅ローン控除)とは、住宅ローンの年末残高の1%が10年間、所得税から控除される制度です。

住宅ローン控除は、医療費控除などの所得控除と異なり税額控除ですから、所得税の軽減額が多いありがたい制度です。

給与所得者で年末調整の義務がない人の場合、所得税は既に給与から源泉徴収されていますので、確定申告を行うことで、所得税の還付を受けることができます。

たとえば、住宅ローンの年末残高が2000万円の場合は、
・年末残高2000万円×控除率1%=20万円
の所得税の軽減又は還付を受けることができます。

こんな多額になりますので、条件に該当する人は、必ず受けるべき制度です。

住宅ローンが連帯債務になっている場合は、その負担について当事者間の内部的契約がどのように定められているかにより、それぞれの住宅借入金控除の対象となる借入金の額が変わります。

共有で連帯債務(連帯借入)の場合の住宅ローン控除の計算

共有名義で住宅ローンの連帯債務(連帯借入)をした場合は、共有者の借入金(住宅ローン)について、どちらの人も住宅ローン控除の適用を受けることができます。

その際、夫婦間で借入割合の取り決めがなければ、原則として共有持分の割合に応じて、それぞれの共有者がローンを負担するものとして扱います。

債務によって受けた利益の割合によるものと考えるからです。

具体例(共有で連帯債務)

住宅ローンの年末残高4000万円、持分は夫60%、妻40%、頭金を持分に応じて負担した場合、住宅借入金控除の対象となる借入金は、次のようになります。
住宅ローン年末残高4000万円×持分60%=2400万円
住宅ローン年末残高4000万円×持分40%=1600万円

したがって、夫は24万円(2400万円×1%)、妻は16万円(1600万円×1%)の住宅借入金控除を受けることができます。


共有持分と連帯債務(連帯借入)の割合が一致していない場合

共有持分と住宅ローンの連帯借入の割合が一致していない場合は、住宅ローン残高のうち、共有持分に応じた借入金が住宅ローン控除額の対象の上限になります。

また、住宅ローンの借入割合が持分より少ない人については、住宅ローン残高のうち、借入割合に応じた借入金が住宅ローン控除額の対象の上限になってしまいます。

具体例(共有持分と借入割合が不一致)

住宅ローンの年末残高4000万円、持分は夫50%、妻50%の場合、借入割合が夫60%、妻40%の場合で、頭金500万円を持分割合に応じて夫婦それぞれが負担した場合に住宅ローン控除の対象となる借入金は、次のようになります。
年末残高4000万円×50%=2000万円(持分50%<借入割合60%のため持分対応分が上限)
年末残高4000万円×40%=1600万円(持分50%>借入割合40%のため借入割合分が上限)

夫が自分の家屋等の持分1/2を取得するために借入金として負担すべき額を、2,000万円(ローン残高4,000万円×持分50%)と考えるのです。

一方、妻の方は、持分1/2を取得するための借入金として負担すべき額は、2,000万円(ローン残高4,000万円×持分50%)と考えますが、夫婦間で決めた借入負担割合によって、実質的な借入金の負担は1,600万円(ローン残高4,000万円×借入割合40%)だけとなってしまいます。

したがって、この場合には、夫は20万円(2000万円×1%)、妻は16万円(1600万円×1%)の住宅ローン控除を受けることができます。

なお、この場合は、この妻が負担すべき400万円(ローン残高4000万円×10%)が夫から妻への贈与となり、贈与税の対象になりますので注意が必要です。

具体例(さらに頭金を1人が負担した場合)

上記具体例と同じく、取得価額4500万円、住宅ローンの年末残高4000万円、持分は夫50%、妻50%、借入割合は夫60%、妻40%の場合で、今度は頭金500万円を持分割合で負担せず、全額を夫が負担した場合の住宅ローン控除の対象となる借入金は、次のようになります。
取得価額4500万円×50%-負担した頭金500万円=1750万円
住宅ローンの年末残高4000万円×持分40%=1600万円
頭金500万円を夫が1人で負担した場合には、夫が自分の家屋等の持分を取得するために借入金として負担すべき額は1,750万円(取得価額4,500万円×50%-頭金500万円)と考えるのです。

一方、妻の方は、持分1/2を取得するための借入金として負担すべき額は、2,000万円(ローン残高4,000万円×持分50%)と考えますが、この例でも夫婦間で決めた借入負担割合によって、実質的な借入金の負担は1,600万円(ローン残高4,000万円×借入割合40%)だけとなってしまいます。

したがって、夫は17.5万円(1750万円×1%)、妻は16.0万円(1600万円×1%)の住宅借入金控除を受けることができます。

なお、この場合は、夫が実際に負担する借入金の額2,400万円と1,750万円の差額の650万円は、夫から妻への贈与として贈与税の対象になりますので注意が必要です。

 → 参考:共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算(国税庁)

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住宅ローン控除|連帯債務のある場合(単独所有)

単独所有で連帯債務(連帯借入)の場合の住宅ローン控除の計算

単独名義で住宅ローンの連帯債務(連帯借入)をした場合は、原則としてその借入金(住宅ローン)の全額について、名義人の住宅ローン控除の適用を受けることができます。

連帯債務をしても、持分がない人については、住宅ローン控除の対象にはなりません。

 → 参考:連帯債務により家屋を取得し単独所有とした場合の借入金の額の計算(国税庁)

具体例(単独所有で連帯債務としている場合)

住宅ローンの年末残高4000万円、持分は夫100%、妻0%で、住宅ローンが夫婦の連帯債務となっている場合、住宅借入金控除の対象となる借入金は、次のようになります。
住宅ローン年末残高4000万円×持分100%=4000万円
住宅ローン年末残高4000万円×持分0%=0円
したがって、夫のみ40万円(4000万円×1%)の住宅借入金控除を受けることができます。

単独所有で連帯債務(連帯借入)の場合に住宅ローンを連帯債務者それぞれが返済した場合

たとえば、建物等の名義と住宅ローンの名義をともに夫1人とした場合において、連帯債務者である夫と妻の2人がそれぞれ住宅ローンの返済をそれぞれの収入から行うと、妻が返済した分は、妻から夫へ贈与されたものとされます。
注意してください。


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住宅ローン控除|連帯債務のある場合(共有単独借入)

建物等を共有名義とし、住宅ローンの名義を1人として連帯債務とした場合は、原則としてその借入金(住宅ローン)の全額について、住宅ローン名義人は、住宅ローン控除の適用を受けることができます。

連帯債務をしても、住宅ローンの名義ではない人については、住宅ローン控除の対象にはなりません。

具体例(共有持分で単独借入)

住宅ローンの年末残高4000万円、持分は夫50%、妻50%の場合、住宅ローンは夫名義の場合の住宅ローン控除の対象となる借入金は、次のようになります。
住宅ローン年末残高4000万円×持分50%=2000万円
住宅ローン年末残高0万円×持分50%=0円

借入金残高が建物等の取得価額を超える場合

共有で単独借入の場合において、住宅ローンの借入残高が、建物等の取得価額を超える場合には、その住宅借入金控除額は、建物等の取得価額になります。

つまり、建物等の取得価額が住宅ローン借入残高の上限となっています。

具体例(借入金残高>建物等の取得価額)

住宅ローンの年末残高4000万円、持分は夫50%、妻50%の場合、住宅ローンは夫名義の場合で、建物等の取得価額が3000万円の場合、住宅ローン控除の対象となる借入金は、次のようになります。
住宅ローン年末残高4000万円×借入割合100%=4000万円>建物等の取得価額3000万円
   →住宅ローン控除の対象借入金は3000万円となります。
住宅ローン年末残高0万円×借入割合0%=0円

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住宅ローンの借入割合の決め方

この記事で説明したように、「持分」「頭金の負担割合」「連帯債務の借入割合」をすべて一致させると住宅ローン控除額の無駄がありません。
贈与税の心配もありませんね。

ただし、連帯債務の借入割合(負担割合)は、持分だけでなく、所得金額等も考慮して慎重に定める必要があります。

もし、夫が妻に代わって借入金を負担した場合には、その金額は夫から妻に対する贈与となり、贈与税の非課税枠年110万円を超えると贈与税がかってしまうからです。

持分だけでなく、頭金の負担割合や住宅ローンの借入割合についても、慎重に検討しましょう。


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まとめ

住宅ローンが連帯債務(連帯借入)になっている場合の住宅ローン控除について説明してきました。

建物等の持分や借入割合によって、住宅ローン控除の対象となる借入金額が代わってきます。

ご自身がどのパターンに該当するのかを判断して、住宅ローン控除を正しく受けていただきたいと思います。




【投稿者:税理士 米津晋次

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※お断り

※記事の内容は、投稿日現在の税法等の規定によっております。税制改正等により最新情報でない場合もありますので、ご了承ください。

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