
年末調整といえば、還付金が楽しみですね。
得した気分になりますし、おいしいものを食べたり、自分へのご褒美を買ったりするのもいいですね。
そこで今回は、この年末調整還付金について、いつもらえるのか?還付はどのように行われるのか?所得税が不足した場合はどのように徴収されるか?仕訳・科目はどうするのかなどについて説明いたしましょう。
年末調整の還付金|いつもらえるのか
年末調整とは?
年末調整とは、サラリーマンの1年間の所得税の精算を、代わりに会社がしてくれることです。
会社は、社員に給与や賞与を支払う際に、所得税及び復興特別所得税(以下「所得税額等」といいます)を引いています。(「源泉徴収」といいます。)
給与や賞与を支給する際に引く所得税額等は、源泉徴収税額表によって算出されていますが、これは扶養人数による概算税額です。
したがって、その年1年間に給与から源泉徴収された所得税額等の合計額は、その社員が1年間に納めるべき所得税額等とは通常一致しません。
また、生命保険料控除など、源泉徴収税額表では考慮していないものもあります。
そこで、1年の給与等の支払が終わってから、その年の所得税額等の正しい税額を計算し、源泉徴収された所得税等との精算を行います。
アメリカなど多くの国では、年末調整という制度がなく、自分で確定申告をしなくてはなりません。
日本では会社がやってくれるという、社員からみればとてもありがたい制度です。
→ 年末調整とは(国税庁)
年末調整で還付金が戻ってくる仕組みは?
多くの社員は、1年間の正しい所得税額等の税額の方が、1年間の給与や賞与から源泉徴収された所得税額等よりも少なくなります。
つまり、源泉徴収税額表の税額は、やや多めになるように設定されているのです。
したがって、その差額を社員に戻す仕組みになっています。
これを「年末調整還付金」といいます。
いくらぐらい還付されるかというと、当然人によって異なるのですが、
私の経験では、正社員であれば、1万円から3万円程度の方が多いと思います。
住宅ローン控除があると、10万円を超える金額の還付金になりことが多いです。
これくらい還付されると、臨時ボーナスのような感じになりますね。
年末調整還付金はいつもらえるのか
年末調整の還付金がもらえる時期は、勤務先の会社によって異なります。
(1)12月下旬支給の給与と一緒に支払われる場合
(2)1月支給の給与と一緒に支払われる場合
(3)12月の年内最後が賞与という会社は、その12月の賞与と一緒に支払われる場合
中には、給与の支払日が毎月5日という会社で、翌年1月5日の支給日までに年末調整が終わらないと、その次の2月5日に還付金が支払われるという会社もあります。
年末調整の計算は複雑で短い期間に全社員分の計算が必要ですから、12月最後の給与に間に合わせることは大変なんですね。
大企業では、年末調整書類の締切日を早めに設定し、年末調整の計算を社内でやることによって、12月給与で還付するところが多いようです。
一方、中小企業では、年末調整書類の締切日が遅い傾向にあり、また、年末調整を税理士事務所に依頼している会社もあります。
税理士事務所も多くの会社の年末調整をしなくてはならないので、そのように年末調整を外部へ委託している会社では、12月給与支給日には計算が間に合わず、別途支払うという会社が多いのではないでしょうか。

年末調整の還付金|還付方法
年末調整還付金の還付方法は、会社の自由になっています。
次のような還付方法があります。還付方法は会社の自由といっても、会社内では通常全員同じ還付方法になります。
社員ごとに還付方法を選択させると、年末調整で忙しいところに、さらに事務手数が増えるからです。
給与や賞与明細の中で還付
大企業で多いのは、12月最後に支払われる給与または賞与を支払う際に、年末調整還付金をプラスして支払う方法です。
給与明細を見て確認してみてください。
「年末調整還付金」という項目があって、差引支給額には、通常の支給額に年末調整還付金額が加算してあるはずです。
通常は、「年末調整還付金」は控除欄にあって、金額がマイナス表示になっています。
中小企業でも、給与の支払を一緒にする会社も多いですが、12月最後の給与または賞与ではなく、1月最初の給与で年末調整還付金の還付をする会社も多いです。

還付金を別に渡す
給与や賞与を支給する際に年末調整還付金を加算する方法ではなく、年末調整還付金を単独で支払う会社も多いです。
12月最後の給与または賞与には、日程的に年末調整の計算が間に合わず、それでも年内に還付してあげたい、という良心的な会社です。
還付金を別に、それも現金でもらえれば、奥さんに内緒で懐に入れることも可能ですね。(笑)
年末調整の還付金|還付金が増える控除
年末調整で受けられる次の控除を申告すると、年末調整還付金が増えます。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
住宅ローンを返済している場合、一定期間内は住宅ローン残高によって控除されるものです。
→ 住宅ローン控除を受ける方へ(国税庁)
社会保険料控除
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、給与から天引きされている社会保険料の全額が控除の対象です。
通常は会社が計算に含まれていますが、国民年金保険料などを自分で支払った場合は追加で申告できます。
→ 社会保険料控除(国税庁)
生命保険料控除
生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払っている場合に適用されます。支払った保険料に応じて一定額が控除されます。
→ 生命保険料控除(国税庁)
地震保険料控除
地震保険や旧長期損害保険の保険料を支払っている場合に適用されます。
→ 地震保険料控除(国税庁)
小規模企業共済掛金控除
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金や小規模企業共済の掛け金を支払っている場合に、支払額全額が控除されます。
→ 小規模企業共済等掛金控除(国税庁)
配偶者控除・配偶者特別控除
生計を一にする配偶者がいる場合に受けられます。配偶者の年間所得が一定額以下であれば適用され、配偶者の所得金額によって控除額が変動します。
→ 配偶者控除(国税庁)
→ 配偶者特別控除(国税庁)
扶養控除
配偶者以外の親族(子供、親など)を養っている場合に受けられます。扶養する親族の年齢や同居の有無などによって控除額が変わります。
→ 扶養控除(国税庁)
特定親族特別控除
扶養している19歳以上23歳未満の親族(主に大学生など)がいる場合に受けられます。アルバイト収入が一定額以下であれば適用され、アルバイト収入によって控除額が変動します。
→ 特定親族特別控除(国税庁)
控除受けるための手続き
これらの控除を受けるためには、年末調整の際に会社から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、生命保険や地震保険などの控除証明書を添付して提出します。
国民年金やiDeCoの掛け金を自分で支払っている場合は、それらの支払証明書も忘れずに提出してください。
年末調整の還付金|なぜもらえない?戻らない?
多くの方は、年末調整で還付金が発生します。
しかし、中には、逆に源泉徴収された所得税額等では税額が不足し、逆に追加で所得税額等が引かれる人もいます。
還付されると思っていたのに、逆に不足で徴収されると、ショックが大きいです。
どうして自分だけが・・・と思いますよね。
このように、年末調整で不足額が発生する主な理由を次に挙げてみましょう。不足になった人は、次のどれかに該当するはずので、確認してください。
年途中で扶養人数が少なくなった場合
お子さんが学校を卒業して4月から就職した場合は、そのお子さんについては、扶養親族から外れることになります。
扶養親族数は、その年の12月31日の現況で決まりますから、年途中で就職したお子さんについては、年末調整では、その年の1月から扶養親族でなかったとして所得税額等を計算します。
一方、給与計算では、1月から3月までの所得税は、そのお子さんを扶養親族数に入れていましたから、源泉徴収された所得税額等は少なかったのです。
その期間が影響して、1月から12月までに源泉徴収された所得税額等の合計額が、本来の所得税額等より少ないことになります。
したがって、このように年途中で扶養親族数が減った場合には、年末調整で所得税額等が不足する場合が発生するのです。
毎月給与計算で適用した扶養人数が多かった場合
所得税では、平成22年の税制改正で、15歳以下(16歳未満)のお子さんは扶養親族数に含めないこととなりました。
それなのに、毎月の給与計算で源泉徴収税額を計算する際に、15歳以下(16歳未満)のお子さんを扶養人数に含めて計算する間違いが多く見受けられます。
源泉徴収税額は、扶養人数が多いと少なくなりますので、そうすると、結果的に本来源泉徴収すべき所得税より少ない税額しか源泉徴収していないこととなります。
このような場合には、年末調整で所得税額等の不足額が発生します。
賞与(ボーナス)が多い場合
源泉徴収税額表の賞与用の税額は、賞与の金額は、多くの企業で支給される程度の想定額を基準に決められています。
しかし、給与と比較して賞与が想定よりもかなり多い場合、賞与が年間所得を押し上げることになって、所得税率も上がます。
そうすると、結果的に毎月の給与から源泉徴収した税率が低かったこととなり、年末調整で所得税額等が不足することが発生することがあります。
毎月の給与の変動が多い場合
所得税等の税率は、超過累進税率といって、所得が高くなるにつれて税率が段階的に上がっていくしくみになっています。
毎月給与から源泉徴収される所得税額等は、給与の変動が大きい場合、毎月源泉徴収する税率も変動が大きくなります。
たとえば、1年間の所得税率が10%になった場合で、給与が少ない月に源泉徴収された所得税等の税額が0%であったとすると、1年間の源泉徴収税額が本来の税額より少なくなってしまいます。
このような場合にも、年末調整で所得税等の不足額が発生する場合があります。
年内最後の給与から源泉徴収しない場合
年末調整の方法として、12月最後の給与または賞与でも、通常月と同じように源泉徴収して年末調整する方法が多いのですが、12月最後の給与または賞与では、所得税額等を全く源泉徴収せずに年末調整の計算をする方法もあります。
後者の12月最後の給与または賞与で源泉徴収しない方法で年末調整をする会社では、当然のことながら、年間の源泉徴収税額はその分前者の方法より少なくなります。
12月最後の支給が給与の場合は、11ヶ月分の所得税等しか源泉徴収されておらず、1ヵ月分少ないことになります。
このような場合も、年末調整で所得税額等の不足額が発生いたします。
還付金は年末調整と確定申告とどちらが得ですか?
年末調整でも確定申告でも還付金は同じ
1か所に勤務するサラリーマン(給与所得者)であれば、所得税を年末調整で精算してもらっても、自分で確定申告をして精算しても、還付金の額は同じです。
確定申告では年末調整に間に合わなかった控除も受けられる
勤務先によっては、年末調整書類の締め切りが早く、控除証明書などの書類が間に合わないことがあります。
このような場合、確定申告でその間に合わなかった控除を受けることにより、年末調整還付金に加えて、確定申告で還付金を受け取ることができます。
年末調整では受けられない控除がある
じつは、年末調整では受けられない控除があります。
医療費控除や寄附金控除、雑損控除です。
ふるさと納税をした方は、寄附金控除を受けます。(ワンストップ納税を選択された方を除く)
これらの適用を受けるには、確定申告をすることになります。
また、マイホームを購入した年の住宅ローン控除も年末調整では受けることができません。確定申告することになります。
(2年めからは年末調整で住宅ローン控除を受けることができます)
その結果、年末調整還付金に加えて確定申告でさらに還付金を受け取ることができます。
→ 医療費を支払ったとき(医療費控除)(国税庁)
→ 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(国税庁)
→ 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)(国税庁)
年末調整の還付金|仕訳・勘定科目
年末調整還付金の仕訳・勘定科目
年末調整を還付した際の仕訳も確認しておきましょう。
・(借方)預り金 (貸方)現預金 ****円
となります。
給料で所得税を控除した勘定科目は「預り金」ですね。
その所得税を還付するのですから、年末調整還付金の勘定科目も「預り金」です。
年末調整不足額徴収(還付金マイナス)の仕訳・勘定科目
反対に、年末調整で所得税が不足(還付金がマイナス)になって、社員さんから徴収した場合の仕訳も確認しましょう。
・(借方)現預金 (貸方)預り金 ****円
です。
年末調整還付の仕訳と貸借が逆となるだけです。
当然、年末調整不足額を徴収した際の相手勘定科目も「預り金」です。
まとめ
今回は、年末調整還付金について説明しました。
還付金は奥様に内緒という人も結構いるようですが、最近は、年末調整を知らない奥様が少なくなり「還付金は?」と聞かれてバレルことも多いようです。(笑)
還付金がもらえるタイミングや還付方法は会社によって異なります。
気になる場合は、会社の給与担当に問い合わせましょう。
年末調整還付金がもらえた場合は、その還付金でおいしいものを食べにいくもいいのではないでしょうか。
【投稿者:税理士 米津晋次】
