企業が代金を振込む際には、振込手数料を支払うことが多いと思います。
それだけでなく、売上先からの入金時に振込手数料相当額が控除されて入金されることもあります。
このような振込手数料は、インボイス制度においてどのような対応をすればいいのでしょうか。
今回は、振込手数料のインボイス対応について説明しましょう。
目次
振込手数料のインボイスは不要ですか?
振込手数料について、登録番号や消費税率等が記載されたインボイス(適格請求書)の受取りと保存が必要な場合もあれば、不要な場合もあります。以下の区分に従い、それぞれでの適切なインボイス対応をしましょう。
買手等が負担する振込手数料
商品等の買手が振込手数料を負担する場合や、役務提供を受けた者が振込手数料を負担する場合は、振込方法によって対応方法が異なります。金融機関の窓口を利用した場合
買手等が、金融機関の窓口を利用して振込みを行った場合は、金融機関から振込手数料に関する適格請求書の受取りと保存が必要です。金融機関が従来の振込依頼書の控え等に代えてインボイス制度の開始以後は適格請求書を交付しますので、それを保存することで振込手数料を仕入税額控除の対象とすることが出来ます。
インターネットバンキングを利用した場合
買手等が、インターネットバンキングを利用して振込みを行った場合も、金融機関から振込手数料に関する適格請求書の受取りと保存が必要です。インタネットバンキング利用による振込は、いわゆる「自販機特例」対象にはなりません。
ただ、金融機関の窓口を利用した場合のように、インターネットバンキングでの支払いにおいては、書面として適格請求書が交付されることが無いことが予測されます。
したがって、インターネットバンキングで支払う場合に買手等が保存すべき適格請求書は、インターネットバンキングから振込みをした際に表示される振込画面において、インボイスに必要な記載事項を表示することで適格請求書が交付され、画面をダウンロードないしコピー等して買手等が保存することが必要になるでしょう。
金融機関等のATMを利用した場合
買手等が、金融機関等のATMを利用して振込みを行った場合は、いわゆる「自販機特例」の対象となりますので、金融機関から振込手数料に関する適格請求書の交付を受ける必要はありません。ただし、金融機関等のATMで振込みをした際の振込手数料であることがわかるように、帳簿にATMの場所などを記載、保存する必要があります。
詳細は、次をご覧ください。
→3万円未満の自動販売機特例|インボイス制度
一定規模以下の事業者についての経過措置
一定規模以下の事業者については、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、その課税仕入れの支払対価の額が1万円未満である場合には、適格請求書の交付を受ける必要はなく、一定の事項が記載された帳簿のみを保存すれば、その課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置が設けられていますので、この場合の振込手数料についても適用があります。詳細→一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)|インボイス制度
経理処理
買手等が、金融機関等のATMを利用して振込みを行った場合は、「振込手数料」等の科目とし、税区分は「課税仕入(適格)」とします。売上負担の振込手数料
売上先からの入金時に振込手数料相当額が控除されて入金されることもあります。この場合の処理には3通りあります。
(1)振込手数料相当額を売上値引きとする方法
(2)振込手数料を代金決済上の役務提供の対価とする方法
(3)振込手数料を立替払いしたものとする方法
売手負担の振込手数料の詳細については、次をご覧ください。
→振込手数料(売手負担)の対応|インボイス制度
まとめ
今回は、振込手数料について、インボイス制度においてどのような対応をすればいいのかを説明いたしました。振込手数料は1回ごとは少額ですが取引数は多いので、インボイス制度ではこの記事を参考に適切な対応をしましょう。
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