年末調整で多くの人が適用を受けるのが生命保険料控除です。
ふつうに掛けているだけでは単純なんですが、いろいろイレギュラーな場合もあります。
そうなると、記入するのに困ってしまいます。
そこで今回は、生命保険料控除におけるよくある疑問に回答いたします。
目次
年末調整の疑問・Q&A(生命保険料控除)|控除証明書
生命保険料控除証明書
【質問】10月ごろ、生命保険会社から郵送されてきた生命保険料控除のハガキを紛失してしまいました。生命保険料控除の適用を受けるためには、生命保険料控除証明書は必ず必要なのでしょうか。
【回答】
原則として、生命保険料控除の適用を受けるためには、生命保険料控除証明書の提出が条件となっています。
生命保険料控除証明書が不要な例外は、次のような場合です。
(1)平成23年12月31日以前に契約した生命保険契約で、年間保険料が9,000円以下のもの
(2)勤務先を対象とする団体保険契約によるもので、保険料控除申告書に勤務先の代表者等の確認印を受けているもの
生命保険料控除証明書の再発行
【質問】生命保険料控除のハガキを紛失してしまいました。今から再発行を依頼したのでは、会社から求められている提出期限に間に合いそうもありません。どうすればいいのでしょうか。
【回答】
まずは、生命保険会社に控除証明書の再発行を依頼しましょう。
会社に提出する保険料控除申告書には、とりあえず申告しておき、証明書はまもなく提出する旨を会社に話してください。
そして、生命保険会社から控除証明書が到着した場合には、すぐに会社に提出してください。
年末調整の疑問・Q&A(生命保険料控除)|家族が契約者受取人
家族が契約者の生命保険金を支払った場合
【質問】私は、妻が契約者となっている生命保契約の保険料を全額負担しています。
この妻が契約者となっている生命保険契約の保険料も、生命保険料控除の対象になりますか?
【回答】
生命保険料控除の対象となる保険料は、自分が契約者の生命保険契約の保険料だけでなく、家族が契約者の生命契約の保険料で自分が負担したことが明らかなものも含みます。
特に奥様が専業主婦で収入がなければ、問題ありません。
ただし、契約者や保険金受取人も自分か家族である必要があります。
保険金受取人であった子が年途中で生計一ではくなった場合
【質問】私は、自分が契約者で保険金受取人が子の生命保険契約の保険料を支払っています。
今年の夏に、子が結婚して親とは別居することになりました。
この場合も、この生命保険契約の1年分の保険料が生命保険料控除の対象になりますか?
【回答】
生命保険契約の受取人が家族(親族)であることが、生命保険料控除の対象となる条件のひとつです。
しかし、そこには、「生計を一にする」ことが条件になっておりません。
したがって、受取人であるお子さんが独立して生計を一にしなくなっても、その生命保険契約の保険料は、生命保険料控除の対象になります。
年途中で非居住者となった場合
【質問】私は、私が契約者である生命保険に加入し、今年1年分の保険料を支払っていますが、今年の4月に長期海外赴任により非居住者になりました。
この場合は、今年支払った保険料の全額が生命保険料控除の対象になりますか?
【回答】
生命保険料控除の対象となる保険料の条件に、居住者が今年支払ったものであることということがあります。
したがって、今年の生命保険料控除の対象となるのは、出国する日までに支払った保険料のみということになります。
ただし、居住者である間に、1年分の保険料を払い込んだ場合は、全額が保険料控除の対象となります。
年末調整の疑問・Q&A(生命保険料控除)|会社が保険料負担など
会社が負担した生命保険料
【質問】私の勤務している会社では、福利厚生の意味で正社員全員に保険料会社負担で生命保険に加入しています。
この会社が負担した生命保険料は、生命保険料控除の対象となりますか?
【回答】
ご質問のように、社員全員に対して生命保険料を会社が負担している場合には、原則として給与として課税されません。
また、生命保険料控除は、自分が負担した生命保険料について適用が受けられます。
したがって、保険料を会社が負担し、給与として課税されなかったということは、ご自身では保険料を負担していないこととなりますので、生命保険料控除の対象とはなりません。
もし、給与課税されているのであれば、保険料を会社が全額負担していても、保険料分を給与として支給され、それをご自身で払い込んだことになりますので、生命保険料控除の対象となります。
入院特約付きの生命保険
【質問】私が加入している生命保険は、通常の生命保険以外に、特約として病気等で入院した場合に給付金がもらえるものをつけています。
この特約の保険料も、生命保険料控除の対象となるのでしょうか?
【回答】
生命保険料控除の対象となる生命保険契約には、死亡保険金が支払われるものだけでなく、傷害や病気による入院費や手術代などの給付金が支給されるものも含んでいます。
したがって、ご質問の特約保険料も生命保険料控除の対象になります。
なお、このような判断は普通する必要がありません。
生命保険料控除証明書の金額に入っていれば、生命保険料控除の対象となるからです。
海外に本店がある生命保険会社の保険料
【質問】私は、海外に本店のある生命保険会社と生命保険契約を締結し保険料を支払っています。
海外に本店のある生命保険会社に支払った保険料も、生命保険料控除の対象となるのでしょうか?
【回答】
海外に本店のある生命保険会社との契約であっても、日本国内の支店・営業所などで生命保険契約を締結した場合は、生命保険料控除の対象となります。
しかし、海外の本店や支店で保険契約を締結した場合は、生命保険料控除の対象とはなりません。
年末調整の疑問・Q&A(生命保険料控除)|イレギュラーな保険料支払
生命保険契約を年途中で解約した場合
【質問】私は、今まで加入していた生命保険契約を、都合により年途中で解約してしまいました。
この場合、今年1月から解約するまでに支払った生命保険料も生命保険料控除の対象となるのでしょうか?
【回答】
もちろん、解約前までに支払った生命保険料も、生命保険料控除の対象となります。
保険会社から生命保険料控除証明書が届いているはずです。
証明書が届いたものは、生命保険料控除の対象となると考えていいのです。
なお、解約返戻金があった場合は、保険料のマイナスと考えるのではなく、一時所得の収入と考えますので、支払った保険料から引く必要はありません。
一時払いの生命保険料
【質問】私は、今年加入した生命保険契約の保険料を一時払いしました。
この場合、今年の生命保険料控除の対象となる保険料は、一時払いの全額なのでしょうか。それとも、今年に対応する分の保険料だけでしょうか?
【回答】
一時払いの保険料は、全ての保険期間を一つの保険期間として計算したものですので、今年支払った一時払い保険料の全額が、今年の生命保険料控除の対象となります。
保険料を前納した場合
【質問】私は、加入している生命保険契約の保険料を今年5年分前納しました。
この場合、今年の生命保険料控除の対象となるのは、今年支払った保険料全額なのでしょうか。それとも、今年の分に対応する保険料だけなのでしょうか?
【回答】
保険料を前納した場合には、次の算式のように、前納した保険料のうち、今年分に対応する分の保険料だけが、今年の生命保険料控除の対象になります。
残りの4年分の保険料は、各年において生命保険料控除の適用を受けられます。
前納した保険料のうち本年中に払込期日が到来する回数
・前納した保険料総額 × —————————————————
前納した保険料の払込期日の総回数
まとめ
今回は、生命保険料控除のおけるよくある疑問に回答いたしました。生命保険料控除は、支払った分が全額所得から引いてもらえるというものではありませんが、それでも税金の負担を安くするのに重要な制度です。
上記記事を参考に、会社から提出を求められた保険料控除申告書に漏れなく正しく記入し、生命保険料控除証明書を添付して、しっかりと生命保険料控除の恩恵を受けてください。
【投稿者:税理士 米津晋次】