令和4年(2022年)分の所得税確定申告書の第一表右下の「還付される税金の受取場所」のすぐ下に、新たに「公金受取口座の同意・利用」欄ができました。
この欄の書き方がわかりにくいですし、間違った記載をすると面倒になります。
そこで今回は、所得税確定申告書の「公金受取口座の同意・利用」欄の正しい書き方を説明いたします。
「公金受取口座の同意・利用」欄の正しい書き方|公金受取口座とは
公金受取口座は給付金等を迅速に受け取るためのもの
国や地方公共団体などの行政機関等が給付金を支給したり、還付金を返金したりする場合に、迅速な給付等ができるように口座情報を登録しておく制度(「公金受取口座登録制度」)ができました。今までは、このような給付金等の支払いの際には、申請書に加え口座情報の記載と通帳のコピーも提出しなければならず、また、行政機関側も口座の確認が必要で、給付まで時間がかかっていました。
あらかじめ口座が登録されていれば、申請の際の口座情報の記載や通帳コピーの添付が不要ですし、行政機関側も確認が不要ですので、迅速に給付ができます。
申請側にも行政機関側にもメリットがある制度です。
令和5年(2023年)1月から運用開始となっています。
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→公金受取口座登録制度(デジタル庁)
公金受取口座の登録方法
この公金受取口座の登録方法としては、令和4年3月28日からマイナンバーカード(個人番号カード)を利用してマイナポータルでの登録手続きができるようになっています。また、令和4年1月からはe-tax(国税電子申告システム)からの公金受取口座登録登録手続きも可能になっています。
さらに、令和4年(2022年)分所得税確定申告書の記載からも、登録の意思表示をすることにより公金受取口座の登録が可能になったのです。
「公金受取口座の同意・利用」欄の正しい書き方|所得税確定申告書
「公金受取口座登録・利用」欄
所得税確定申告書第一表右下の「公金受取口座登録・利用」欄はこのようになっています。還付される税金の受取場所欄のすぐ下にあります。
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還付にならない場合は記載不要欄
「公金受取口座登録・利用」欄は、そもそも今回の申告で所得税が還付とならない場合には記載は不要です。正しい書き方(1)|公金受取口座の登録も利用もしない場合
まずは、令和3年(2021年)分までの所得税確定申告と同様、単に「還付される税金の受取場所」に記載した口座に還付してほしいだけの場合の正しい書き方です。この場合は、「還付される税金の受取場所」のみ記載し、「公金受取口座登録の同意」にも「公金受取口座の利用」にも○をつけないようにしてください。
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正しい書き方(2)|公金受取口座の登録をする場合
次に、今回の確定申告書提出のついでに「還付される税金の受取場所」に記載した口座を公金受取口座に登録したい場合の正しい書き方です。この場合は、、まず「還付される税金の受取場所」欄に自分名義の口座情報をに記載し、さらに「公金受取口座登録の同意」に○をつけます。
そして、「公金受取口座の利用」には○をしないようにしてください。
なお、この方法で公金受取口座を登録すると、マイナポイントは付与されません。ポイントがほしい場合は、マイナンバーカードを使って登録しましょう。
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正しい書き方(3)|公金受取口座を利用する場合
また、すでにマイナポータルなどで公金受取口座の登録がしてあり、今回の還付金も公金受取口座へ振込してほしい場合です。この場合は、まず「還付される税金の受取場所」には何も記載しません。
そして、「公金受取口座登録の同意」に○をせず、「公金受取口座の利用」だけに○をします。
繰り返しますが、「還付される税金の受取場所」は空欄のままとしてください。
正しい書き方(3)|公金受取口座とは別の口座に振り込んでほしい場合
最後は、すでにマイナポータルなどで公金受取口座の登録がしてあるが、今回の還付は公金受取口座とは別の口座に振込してほしい場合です。この場合は、まず「還付される税金の受取場所」に公金受取口座とは別の還付してほしい自分名義の口座情報を記載します。
そして、「公金受取口座登録の同意」にも「公金受取口座の利用」にも○をつけないようにしてください。
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「公金受取口座」についての疑問
公金受取口座の登録について、いろいろ疑問があると思います。主なものを記載します。
公金受取口座の登録までの期間は?
公金登録口座の登録から通知までは、1ヶ月程度かかります。また、郵送での登録の場合は、1ヶ月半ほどかかるようです。
公金受取口座の登録通知方法は?
公金受取口座の口座登録結果の通知は、次の方法でされます。※クリックして拡大表示できます。
※顧問税理士のメッセージボックスやマイナポータルには送付されませんし、税理士宛てに郵送もされません。
公金受取口座の情報確認の方法は?
登録した公金受取口座情報は、マイナポータルから確認することができます。公金受取口座で受け取れる給付金は?
公金受取口座で実際にはどのような給付金が受け取れることになるのでしょうか。主なものを列挙します。
1 | 児童手当などの子育て給付金 |
2 | 年金 |
3 | 税金還付金(所得税、消費税、固定資産税、自動車税など |
4 | 国民健康保険の還付金 |
5 | 生活保護費 |
6 | 傷病年金、障害年金、遺族年金 |
→公金受取口座を利用して受け取ることができる給付金等(デジタル庁)
登録すると口座内容や預金残高が政府や行政機関に見られるのでは?
公金受取口座に登録しても、預貯金の明細や残高が行政機関に知られることはありません。ただし、税務調査等の法令に基づく場合が例外です。
(税務調査等で必要があれば、公金受取口座に登録していなくても閲覧されます)
公金受取口座の変更や登録削除はできる?
登録した公金受取口座は、いつでも変更や削除を行うことができます。まとめ
今回は、令和4年(2022年)分の所得税確定申告書に新たにできた「公金受取口座の同意・利用」欄の正しい書き方を説明しました。記載方法を間違えると、税務署から問い合わせがあったりして面倒です。
今回の記事を参考に、「公金受取口座の同意・利用」欄を正しく記載しましょう。
【投稿者:税理士 米津晋次】