住宅借入金控除(住宅ローン控除)をしても、そもそも所得税が引かれていない場合には、控除を受けることができません。
また、所得税は引かれていても、住宅借入金控除額の方が多いと、もっと控除を受けられたのに・・・ともったいない気がします。
しかし、住宅借入金控除を住民税から控除してもらえる場合があるのです。
そこで今回は、住宅借入金控除が住民税から控除されるしくみについて説明します。
住宅ローン控除|住民税で控除される場合
住宅ローン控除の概要
10年間税額控除が受けられる
住宅借入金控除(住宅ローン控除)制度は、住宅ローンを借りて住宅を取得する場合に、取得者の金利負担の軽減を図るための制度です。一定の条件を満たした場合には、毎年末の住宅ローン残高又は住宅の取得対価のうち少ない方の金額の1%が10年間所得税額から控除されます。
1000万円のローン残高なら、1%は10万円です。
所得控除ではなく、税額控除ですから、まるまる税金が安くなるのです。
取得した翌年に確定申告が必要
住宅ローン控除制度の適用を受けるには、原則として、住宅を取得した翌年3月15日までに所得税の確定申告をする必要があります。ただし、最長5年間遡れますので、翌年3月15日を過ぎても申告することにより、住宅ローン控除の適用を受けることも可能です。
サラリーマンは2年めからは年末調整で控除される
サラリーマンの場合は、2年めからは、勤務先の年末調整で住宅ローン控除を受けることができます。住宅ローン控除が住民税からも控除される場合
ローン控除額は所得税額が上限
住宅ローン控除は、支払った所得税の還付又は減額制度です。したがって、所得税以上の住宅ローン控除額だったとしても、控除を受けられるのは、所得税額が上限です。
たとえば、年末借入残高が2000万円、所得税が15万円の場合
・住宅ローン控除額は、年末残高2000万円×控除率1%=20万円となります。
しかし、
・所得税15万円<住宅ローン控除限度額20万円
ですから、所得税の還付・軽減を受けられる金額は15万円になります。
そうすると、住宅借入金控除額の5万円(控除額20万円-所得税15万円)を損したように思います。
所得税から控除できなかった残額が住民税から控除可能になった
でも安心してください。その所得税では控除できなかったローン控除の残額5万円については、住民税から控除できるような仕組みに変更されました。
つまり、住宅ローン控除額が所得税からは控除しきれない場合に、住民税からも一部控除されるのです。
これは、平成19年に行われた税源移譲により、所得税が減税となり、所得税で控除できる住宅ローン控除額が減少する場合があるため、所得税から控除しきれなかった額がある場合は、翌年度の個人住民税から控除できるようにしたのです。
出典:総務省ホームページ
住宅ローン控除|住民税の控除額計算と限度額・上限
住民税の住宅ローン控除額の計算式
次の(1)(2)のいずれか少ない金額が、翌年度の住民税(市・県民税)から控除されます。(1)所得税の住宅ローン控除可能額のうち所得税において控除しきれなかった額
(2)所得税の課税総所得金額等の額に7%を乗じて得た額(上限136,500円)
出典:三重県ホームページ
具体例
・所得税の課税総所得金額等が200万円・住宅ローン控除が25万円
・所得税額が9万円
の場合
(1)所得税で控除されなかった住宅ローン控除額は16万円(控除額25万円-所得税9万円)
(2)所得税の課税総所得金額等の額200万円に7%を乗じて得た額は14万円。しかし上限が136,500円ですので、136,500円
(1)(2)のうち少ない金額は、136,500円
したがって、住民税額から控除される住宅ローン控除額は、136,500円となります。
住宅ローン控除|住民税からも受けるための手続き
所得税の確定申告をした場合
自営業者、フリーランスなど確定申告をした方で、その際に、住宅ローン控除の申請もした場合は、特別な手続きを何をすることなく、翌年の住民税額から住宅ローン控除額の残額の全部又は一部が控除されます。サラリーマンで、初年度に住宅ローン控除の申告をした場合
確定申告の義務がないサラリーマンは、住宅ローン控除制度の適用を受けるには、初年度だけはご自身で所得税の確定申告をしなければなりません。確定申告に基づいて、翌年の住民税は、給与天引きで徴収されますが、その際、住宅ローン控除額の残額の全部又は一部が減額された住民税額に自動的になります。
サラリーマンの2年目以降
サラリーマンの場合、2年目以降は、勤務先の年末調整で、住宅ローン金控除を受けます。そして住民税については、その年末調整後の所得に応じて、給与から控除される翌年の住民税額は、住宅ローン控除額の残額の全部又は一部が減額された税額に自動的になります。
ただし、市町村による住民税の住宅ローン控除額の計算には、次の情報が必要ですので、給与所得の源泉徴収票の摘要欄に次の2項目が明記されていることを確認してください。
もし記載がされていないと、住民税の計算に住宅ローン控除が反映されないことになります。
勤務先に申し出て、源泉徴収表に次の2項目を記載されたものを再発行してもらうようにしてください。
(1)住宅借入金等特別控除(可能)額
(2)居住開始年月日
出典:川崎市ホームページ
まとめ
住宅ローン控除が住民税から控除されるしくみを説明してきました。所得税が引かれていない、少額だからといって住宅ローン控除の申告をしないのではもったいないです。
この記事で、住宅ローン控除が住民税からもされるしくみを理解して、住宅ローン控除を最大限に受けましょう。
【投稿者:税理士 米津晋次】
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