平成31年10月1日より適用開始予定の消費税の軽減税率対象品目の中に新聞があります。
新聞といっても、日本経済新聞社が提供する日経電子版などの電子版の新聞・デジタル新聞もあります。
このような電子版の新聞は、消費税軽減税率の対象になるのでしょうか。
目次
「新聞」の消費税軽減税率適用条件
消費税軽減税率が適用される「新聞」とは?
消費税の軽減税率対象品目に「飲食料品」とともに「新聞」が挙げられています。
ただ、「新聞」といっても、何でも軽減税率の適用になる訳ではなく、条件が規定されています。
1,週2回以上発行
消費税の軽減税率が適用される「新聞の譲渡」とは、一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行される新聞の定期購読契約に基づく譲渡のことをいう、としています。
その「週2回以上発行」される新聞とは、通常の発行予定日が週2回以上とされている新聞をいいます。
もし、休刊日があって、たまたまその週が1回の発行となったとしても、「週2回以上発行」の条件に該当しますね。
一方、もともと週1回とか月1回発行することになっているものは、たとえ「新聞」と名前についていても、軽減税率の対象にはなりません。
2,定期購読契約
「定期購読契約の基づく譲渡」も軽減税率適用対象の新聞の譲渡の条件になっています。
「定期購読契約」ということは、その新聞を定期的に継続して配達されるということになります。
したがって、読売新聞や朝日新聞、産経新聞、毎日新聞、東京新聞、日本経済新聞といった誰でも新聞だと認識するようなものでも、新聞販売店の配達員が配達せず、コンビニエンスストアや駅売店などで販売されているものは、「定期購読契約」に該当しませんね。したがって、コンビニエンスストアや駅売店などで販売されている新聞は、消費税の軽減税率の対象にならず、消費税10%がかかることになります。
電子版新聞・デジタル新聞
新聞各紙の電子版には何があるか
若者中心に新聞をとらなくなってきた状況に対応するため、各新聞社は電子版を提供しています。
◆日本経済新聞の電子版「日経電子版」
就活生や社会人には必須とされている日本経済新聞。
その電子・テジタル版が「日経電子版」です。
料金は、ほかの電子版と比較して少し高いです。
しかし、朝刊・夕刊の新聞記事が過去3ヶ月分検索できます。
経済ニュースは過去の記事をみたいことが多いので便利ですね。
◆読売新聞の電子版「読売プレミアム」
朝刊販売数1位の読売新聞が発行する電子版は「読売プレミアム」です。
電子版単体での契約はできませんが、通常の新聞購読料に少しプラスするだけで購読できます。
「読売プレミアム」では、スポーチ報知の1面が無料で読める特典があります。
◆朝日新聞の電子版:朝日新聞デジタル
朝刊販売数2位の朝日新聞の発行する電子版は、「朝日新聞デジタル 」といいます。
電子版単体契約の「シンプルコース」「デジタルコース」と、通常の新聞購読契約にプラスする「ダブルコース」があります。
◆毎日新聞の電子版「デジタル毎日」
朝刊販売数3位である毎日新聞の電子版が、「デジタル毎日」です。
こちらも朝日新聞と同じように、電子版単体契約が2種類と新聞購読にプラスする1種類の合計3種類のコースがあります。
電子版単体契約は、「ワンデープラン」と「スタンダードプラン」、新聞購読に電子版をプラスする「プレミアムプラン」となっています。
ただ、新聞紙面と同じ内容を読めるのは、「プレミアムプラン」のみとなっていて、電子版単体契約では、有料記事しか読むことができないようです。
◆産経新聞の電子版「産経電子版」
朝刊販売数5位である産経新聞も電子版「産経電子版」のサービスを提供しています。
コースは、電子版単体契約のみです。
紙面すべてが読める電子版の中では、料金が安いところが特徴です。
ただし、過去記事検索ができない面もあります。
新聞電子版のメリット
新聞電子・デジタル版には、次もメリットがあります。
◆1、読み終わった後の処分に困らない
紙の新聞だと、まず、読み終わった後、新聞紙を回収に出すまでの間、保管しておかなければなりません。
そして、回収日には、紐でまとめて重い束を回収場所まで持っていかなくてはなりません。
大変ですね。
電子・デジタル版なら、保管も紐でまとめることも、回収場所まで持っていく必要もありません。
◆2、外出時にかさばらない
外出時に読みたい場合、紙の新聞であれば、小さく折ったとしてもかさばります。
でも、電子・デジタル版なら、スマホやタブレットを持てばいいですね。
◆3、読みたい記事の検索ができる
紙の新聞では記事の検索はできません。
しかし、電子・デジタル版では、得意な記事検索ができます。
◆4、今日の最新ニュースを読むことができる
紙の新聞では、朝刊なら昨夜までのニュースしかわかりません。
しかし、電子・デジタル版であれば、その日起こったニュースを早く読むこともできます。
◆5、小さい文字を拡大できる
紙の新聞だと文字が小さくて読みにくい場合でも、電子版なら文字の大きさを自由に変えることができます。
老眼の人なら、老眼鏡がなくてもよむこともできますね。
◆6、記事を読むのにスペースがわずかでいい
紙の新聞の場合、読むのみは、どんなに器用に新聞を折りたたんでも、ある程度のスペースがいります。
満員電車で新聞を読もうとすれば、まわりの人が迷惑がります。
その点、電子・デジタル版なら、小さなスマホでも読むことができ、まわりの人にあまり迷惑がかかりません。
◆7、カラーの写真や図が見れる
紙の紙面なら白黒ですから、写真や図も白黒です。
その点、電子・デジタル版なら、写真がフルカラーできれいに見ることができますし、図もカラーなら白黒よりもわかりやすくなります。
紙の新聞にない映像ニュースを見ることできる場合があります。
新聞電子版のデメリット
新聞の電子・デジタル版は、いいことばかりではありません。デメリットもあります。
◆1、インターネット環境が必要
電子・デジタル版の新聞をスマホやタブレットで読むためには、インターネットに接続できることが前提になります。
Wi-Fiが繋がらない場所では、当然記事が読めません。
また、ポータブルルーターを使用している場合に、その電池が切れたり、ルーターが故障するとインターネットに接続できず、記事が読めなくなってしまいます。
◆2、スマホなどのバッテリーがなくなると読めない
ルーターの電池は大丈夫でも、スマホやダブレットのバッテリーがなくなってしまうと、やはりインターネットに接続できません。
記事を読めなくなります。
◆3、一覧性に欠ける
紙の新聞の場合は、サイズがとても大きいため、パッとみて今日はどんな記事があるのか、そのタイトルの大きさや記事の面積の大きさでその重要度がすぐわかります。
そのため、自分が興味のない話題でも、大きくなタイトルがついていると、その記事を読むきっかけにもなります。
電子・デジタル版は、小さいので、そんな使い方は困難です。
一覧性という意味では、やはり紙の新聞に劣ります。
◆4、紙面をざっと読むことがむずかしい
紙の新聞の場合は、紙面をざっと見るということができます。
それに対し、電子・デジタル版では、記事をひとつひとつ読むことになり、ざっと読むということができません。
◆5、直接文字を書き込むことができない
紙の新聞の場合は、紙面に直接文字などを書き込むことができます。
電子・デジタル版の場合、印をつけたりはできますが、文字を直接書き込むことができませんね。
◆6、折込広告がない
紙の新聞なら、地元のスーパーなどの折込広告がたくさん入ってきます。
今日は、ここが安い、こっちの店が安い、あそこに新しい店ができた、など地元の情報を得られます。
しかし、電子・デジタル版の場合には、折込広告は入ってきませんから、地元の情報を得ることが困難になります。
電子版新聞・デジタル新聞は消費税軽減税率の対象になるのか?
それでは、電子版新聞は、消費税の軽減税率の対象となる「新聞」に該当するのでしょうか。
電子・デジタル版の新聞は、電気通信利用役務の提供に該当
インターネット接続により記事を読む電子版の新聞は、「電気通信利用役務の提供」に該当するそうです。
つまり、電子版新聞は、通信回線を通じて行われるサービスの提供ということです。
電子・デジタル新聞には軽減税率は適用されない
ということは、電子版の新聞は、消費税の軽減税率適用の要件である「定期購読契約の譲渡」には該当しないことになります。
わかりにくいですが、少なくとも電子版新聞は「譲渡」ではありません。「提供」なのです。
したがって、電子・デジタル版の新聞には、消費税の軽減税率は適用されません。
まとめ
読売新聞や朝日新聞、産経新聞、毎日新聞、東京新聞、日本経済新聞といった誰でも知っている新聞の電子・デジタル版であろうと、消費税の軽減税率の適用はありません。
新聞に消費税軽減税率がなぜ適用になるのか疑問がありますが、仮に新聞社の活字文化の維持のためとか、民主主義の礎を守るためだという意見を尊重したとしましょう。
それでは、なぜ新聞のうち配達される定期購読分だけが軽減税率の適用になり、コンビニエンスストアや駅の売店などで買う新聞や電子・デジタル版の新聞には軽減税率が適用されないのか?
全く理解できないモヤモヤが残りませんか?
【投稿者:税理士 米津晋次】