税金の知恵袋

現役税理士が、皆様の税金に関するさまざまな疑問を解決し、お得情報もお知らせします。

Home » 所得税 » 白色申告と青色申告の比較、違い、メリット、変更手続きについて

白色申告と青色申告の比較、違い、メリット、変更手続きについて

calendar

reload

kakeibo
確定申告する人なら、白色申告とか青色申告とか聞いたことがあると思います。

しかし、それぞれの条件や違い、メリット・デメリットなどあまり知らない人が多いようようです。

そこで今回は、個人が申告する場合の白色申告と青色申告について説明いたします。


白色申告とは?青色申告とは?

所得税の確定申告をする場合には、白色申告か青色申告のどちらかを選択することになっています。

厳密にいえば、青色申告を選択していない場合は、自動的に白色申告になります。

青色申告と白色申告 出典:弥生株式会社運営「スモビバ」

白色申告とは

白色申告とは、青色申告の申請書を提出していない事業者が行う確定申告制度です。
確定申告のやり方が簡単です。

記帳についても簡単ですが、
2014年(平成26年)分からは、すべての白色申告者に「帳簿への記帳」と「帳簿等の保存(期間5~7年)」が義務づけられたため、帳簿の作成だけならば青色申告とそれほど手間は変わらなくなりました。

青色申告とは

青色申告とは、毎日の取引を帳簿へ記録し、その結果を確定申告書に記載して申告する制度のことです。

原則、複式簿記により帳簿を記録するため、その分手間がかかります。

しかし、代わりに事業の利益から55万円(一定の条件を満たすと65万円)又は10万円を無条件で差し引けるなど、税金が安くなる特典が用意されています。

なお、税務署に事前に申請書を提出し、承認を受ける必要があります。

青色申告では帳簿の付け方により、 10万円控除か55万円(又は65万円)控除かを選択できます。


青色申告の対象者

青色申告の対象者は、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」のいずれかがある人です。

副業は通常「雑所得」ですから、青色申告を選択することはできません。

青色申告の手続き

青色申告をするには、事前に税務署に対する手続きが必要になります。

詳細は、後で説明します。

副業している会社員の場合の注意点

会社員が副業で商売等をしている場合は、一般的に金額が少ないですから、所得税の所得種類では、「雑所得」に該当します。

インターネットの一部のサイトで情報が流れているように、「個人事業開業届出書」を税務署に提出すれば、「事業所得」という単純ではありません。

「事業所得」とするには、それだけで生計が立てられるほどの規模が必要です。


スポンサーリンク

白色申告と青色申告の比較・違い・メリット

白色申告と青色申告の比較・違い

白色申告と青色申告の違いを簡単に言えば、

青色申告は、申告に手間がかかるが納税額が少なくて済み、
白色申告は、申告にあまり手間がかからないが節税効果はない、

といったところでしょう。

白色申告のメリット・デメリット

白色申告のメリット

白色申告のメリットは、何と言ってもあまり手間がかからないことです。

白色申告では、「単式簿記」で記帳すればOKです。

「単式簿記」というのは、一般的な家計簿やお小遣い帳と同じようなものです。

従来は、領収書などの資料さえ保存していれば、記帳は義務ではありませんでしたが、2014年(平成26年)分からは、すべての白色申告者に「帳簿への記帳」と「帳簿等の保存(期間5~7年)」が義務づけられました。

そのため、従来の記帳が義務ではないメリットはなくなりました。

白色申告のデメリット

白色申告のデメリットは、青色申告に与えられる特典がありませんので、青色申告に比べて税金(所得税、住民税、個人事業税)が多くなることです。

また、白色申告では、税務署の判断で「推計課税」が行われる場合があります。

「推計課税」とは、実際の資料に基づくことなく、「本当はこれくらい税金がかかっているはず」として課税がされることです。

白色申告は、「会計のむずかしいことがわからない」「節税するほど事業所得はない」「手間をかけたくない」という個人事業主の人に向いている申告方法でしょう。

青色申告のメリット・デメリット

少しでも節税をしたいと考えるのであれば、税制上の優遇を受けられる青色申告の方が適しているでしょう。

青色申告メリット

出典:ソリマチ株式会社

青色申告のメリット1

青色申告の一番のメリットは、青色申告特別控除額として55万円(65万円)又は10万円の控除を受けることができることでしょう。

簡単にいえば、事業等の利益から青色申告特別控除額を引いてもらえるということです。


青色申告特別控除額には、まず「55万円(一定の場合65万円)」と「10万円」の2種類がありますが、「単式簿記」での記帳・申告だと、青色申告特別控除額は、10万円となります。

一方、複式簿記で記帳・申告すると、青色申告特別控除額は、55万円(65万円)となります。

ただし、不動産所得では、事業的規模でないと、いくら複式簿記で記帳・申告しても、青色申告特別控除額は10万円になってしまいます。

※事業的規模とは、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業的規模として取り扱われます。

(1)賃貸アパート、マンション等については、10室以上貸していること。
(2)一戸建ての家を5棟以上貸していること。

なお、月極駐車場の場合には、5台分をアパート1室として計算できます。

次のような組み合わせのケースもOKです。
・マンションを2部屋と一戸建て4棟
・マンションを6部屋と一戸建て2棟
・マンションを6部屋と一戸建て1棟、駐車場10台

この基準は、「5棟10室基準」と呼ばれています。

 → 参考:不動産所得で青色65万円控除を受けられる?

白色申告、青色申告特別控除10万円の場合と、青色申告特別控除65万円の場合の税金の違いを具体例で試算してみましょう。(概算税額です)

【具体例】
事業所得のみ。
年間売上600万円、必要経費255万円、所得控除45万円の場合

(1)白色申告の場合
・課税所得金額:600万円-255万円-45万円=300万円

・所得税:300万円×税率10%-控除額97,500円=202,500円
・復興特別所得税:202,500円×税率2.1%=4,200円
・住民税:300万円×税率10%=300,000円
・個人事業税:(300万円-事業主控除290万円)×税率5%=5,000円
・税金合計:511,700円

(2)青色申告(特別控除10万円)の場合
・課税所得金額:600万円-255万円-45万円-10万円=290万円

・所得税:290万円×税率10%-控除額97,500円=192,500円
・復興特別所得税:192,500円×税率2.1%=4,000円
・住民税:290万円×税率10%=290,000円
・個人事業税:(300万円-事業主控除290万円)×税率5%=5,000円
・税金合計:491,500円

(3)青色申告(特別控除10万円)の場合
・課税所得金額:600万円-255万円-45万円-65万円=235万円

・所得税:235万円×税率10%-控除額97,500円=137,500円
・復興特別所得税:137,500円×税率2.1%=2,800円
・住民税:235万円×税率10%=235,000円
・個人事業税:(300万円-事業主控除290万円)×税率5%=5,000円
・税金合計:380,300円

(4)税金合計の違い
・白色申告       :511,700円
・青色申告(10万円控除):491,500円
・青色申告(65万円控除):380,300円

この事例では、白色申告から青色申告(65万円控除)にすると、131,400円節税することができます。

青色申告のメリット2

青色申告の2番目のメリットは、赤字を3年間繰り越してその年の利益と相殺できることです。

例えば、事業を開始した1年目は、赤字が100万円だったとします。

2年目に100万円の黒字となった場合、2年目の事業所得100万円から1年めの赤字100万円を相殺できるということです。

したがって、過去の赤字との相殺を受けた年は、税金が少なくなります。

青色申告のメリット3

青色申告の3つめのメリットは、家族に対する給与を必要経費にできたり、自宅をオフィスにしている場合に家賃や光熱費の一部を経費として計上できることです。

ただし、家族給与(青色事業専従者給与)もいくらでも必要経費にできる訳ではなく、つぎの要件があります。

・青色申告者と生計を一にする配偶者か親族
・年齢が15歳以上
・6カ月を超える期間(又は事業年度の2分の1以上)もっぱら事業に従事していること。
・届出書に記載されている金額の範囲内で支払われていること(働いている状況に比べて金額が多すぎると必要経費には認められません)

青色申告のメリット4

青色申告の4番めのメリットは、1組30万円未満のものなら全額経費にできることです。

一般に、備品や建物などに使った経費が10万円以上になると必要経費に一括計上できなくなります。
減価償却資産として処理し、一定の計算式によって算出された減価償却費しか必要経費にはなりません。

しかし、青色申告であれば、、1組30万円未満のものは一括必要経費に計上できます。(1年間の合計が300万円まで)

青色申告のメリット5

さらに青色申告申告にはメリットがあります。

貸倒引当金を計上できることです。

「貸倒引当金」とは、売上代金等が回収できなくなった場合を想定して、まだ回収していない売掛金の一部を費用として計上することです。

「貸倒引当金繰入額」を利益から引けることで、課税対象額が少なくなり税額を軽減できます。

青色申告のデメリット

多くの特典を受けられる青色申告ですが、メリットばかりではなく、デメリットもあります。

青色申告のデメリットは、ひとえに「手間がかかること」です。

税制上のメリットが大きい青色申告では、事前の「申請書の提出」と「帳簿付け」、「決算書の提出」が必要です。

帳簿とはお金の流れをすべて記録するもの。支出も収入もしっかり と記入しなければいけません。

特に青色申告特別控除55万円(65万円)の適用を受けるためには、「複式簿記」での記帳が必要です。


おすすめ会計ソフト

青色申告特別控除65万円の適用を受けるためのデメリットである、複式簿記で記帳することについては、会計ソフトを使うことでかなり軽減できます。

従来のダウンロード型の会計ソフトに加えて、最近はクラウド型の会計ソフトが出てきています。

クラウド会計ソフトは、通帳明細やカード明細の自動取り込みができたり、インターネットに接続さえできれば、WindowsPCでも、Macでも、タブレットでもスマホでもアクセルができる点で人気になっています。


おすすめの会計ソフトをご紹介しましょう。

マネーフォワードクラウド確定申告

「マネーフォワードクラウド確定申告」は、家計簿ソフトで有名な株式会社マネーフォワードが提供しているクラウド型の会計ソフトです。

2,000以上の金融機関の自動データ取得に対応しています。


freee

「freee」は、テレビCM等でよく宣伝しているクラウド型の会計ソフトです。freee株式会社が提供しています。

簿記の知識がない人のための対話型の入力が特徴です。

弥生会計、やよいの青色申告

「弥生会計」「やよいの青色申告」は、ダウンロード型会計ソフトで一番売れている会計ソフトです。
「弥生会計オンライン」というクラウド型の会計ソフトの提供もしています。
弥生株式会社が提供しています。

なんといっても会計ソフトの王道ブランド「弥生」の製品という安心感があります。


スポンサーリンク

白色申告から青色申告へ変更手続き

青色申告への変更手続き

「所得税の青色申告承認申請書」を一定の提出期限までに所轄税務署長に提出する必要があります。

用紙は、税務署で入手するか、国税庁ホームページからダウンロードしてください。

検索エンジンから「所得税の青色申告承認申請書」のキーワードで検索すれば、トップに表示されます。

所得税の青色申告承認申請書

青色申告承認申請書の提出期限

「青色申告承認申請書」は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日から2月以内。)に提出が必要です。

つまり、申告時に選択できるのでなく、事前に申請書の提出が必要なのです。

なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。

青色申告承認申請書の書き方・ポイント

「青色申告承認申請書」を書く際の書き方・ポイントを簡単に説明しましょう。

税務署名

納税する税務署名を記入します。右隣に有る「納税地」を管轄する税務署名を記入します。
下記に「国税局の所在地及び管轄区域」が有り、各表の県名をクリックすると管轄の税務署が表示されますのでご参照下さい。

検索エンジンで「税務署 ○○(市区町村名を入力)」のキーワードを入力すれば、所轄税務署名がわかります。

納税地

「住所地・居所地・事業所等」の中から該当するものを◯で囲み、住所とTEL番号を記入します。

・住所地:簡単に言うと、住民票に記載の有る住所のことです。
・居所地:日本国内に住民票がなく日本に住んでいる場所がある場合の住所です。
・事業所:個人事業主の場合、仕事をする為に通勤している場所等が事業所になります。

個人事業主の場合、一般的に自宅に事務所を構えますので住所地にすればいいでしょう。

氏名、生年月日、職業、屋号

個人事業主の「氏名・生年月日・職業・屋号」を記入します。

職業:具体的な事業内容を記入します。例として「インターネット通販」等です。
屋号:具体的な店名、社名等を記入します。「〇〇ドットコム」等。
会社と違って登記するわけではありませんので、好きなようにつけて構いません。
無い場合は記入しなくて大丈夫です。

青色申告の開始年

青色申告で確定申告を始めたい年を記入します。

事業所又は所得の起因となる資産の名称及びその所在地

個人事業主の場合、一般的に自宅に事務所を構えますので、「名称」は無しで自宅住所のみ記入そればいいでしょう。

所得の種類

事業所得、不動産所得、山林所得のうち、該当する物を◯で囲みます。

個人事業主の場合、一般的に事業所得になります。

その他参考事項

(1)簿記方式
該当する物を◯で囲んでください。
手間は掛かりますが、パソコンの会計ソフトも有りますのでそれを利用して、節税メリット多い複式簿記を選びましょう。

(2)備付帳簿名
青色申告のため備付ける帳簿名を◯で囲んでください。
まず、「固定資産台帳」、「総勘定元帳」、「仕訳帳」を◯で囲みます。後は それぞれの事業で必要に応じて、「現金出納帳」、「売掛帳」、「買掛帳」等を◯で囲みます。

(3)その他
特に伝えておきたいことが有った場合、記入します。


青色申告から白色申告への変更手続き

いったん青色申告を選択してやってみたところ、会計処理が大変というときは、後から白色申告に戻すことは可能です。

税務署に、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します。
提出期限は、青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日までです。

なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。

所得税の青色申告の取りやめ届出書
用紙は、税務署で入手するか、国税庁ホームページからダウンロードしてください。

検索エンジンから「所得税の青色申告の取りやめ届出書」のキーワードで検索すれば、トップに表示されます。

スポンサーリンク

まとめ

白色申告と青色申告について説明してきました。

一般的には、複数の特典がある青色申告をおすすめしますが、
説明しましたように、青色申告にもデメリットがあります。

白色申告と青色申告のメリット・デメリットをしっかり理解し、そのうえで自分にとってふさわしい申告を選択してください。

(Visited 2,013 times, 1 visits today)

※お断り

※記事の内容は、投稿日現在の税法等の規定によっております。税制改正等により最新情報でない場合もありますので、ご了承ください。

この記事をシェアする

コメント

コメントはありません。

down コメントを残す




error: Content is protected !!