
金(地金)を売却すると、その売却益に所得税・住民税がかかります。
2025年(令和7年)は、金相場が急上昇しましたから、金を売却した場合の多くは売却益が発生していることでしょう。
売却益は、購入代金や手数料(取得価額)が明確になっていなければ計算ができません。
金を売却したあとで、確定申告しようとして取得価額がわからず焦る人も多いようです。
そこで今回は、金を売却するときになって慌てないための購入明細の保存や、相続があった場合、購入明細が見つからない(取得価額が不明)な場合の対処法について説明します。
金投資・売却の確定申告|取得費が大切(費用明細の保存)
金売却時の譲渡所得の計算方法
金を売却した場合の税金上の所得区分は、通常譲渡所得(総合課税)となります。
(継続的に営利目的で売却している場合には「事業所得」又は「雑所得」となる場合があります)
金を売却した際の税金計算で必要となる譲渡益は、次のように計算します。
・譲渡益=譲渡収入(金売却金額)-(取得費+譲渡費用)
ここで、譲渡費用とは、金を売却する際に業者に支払った手数料のことです。
金売却時の消費税はどうするのか?
金の購入時や売却時には、消費税がかかっていますね。
譲渡所得の計算上、金の売却収入や取得費、譲渡費用は、原則すべて消費税込みで計算します。
(事業所得などで税抜き処理をしている場合は、例外的に消費税抜きで計算します)
金の取得費とは
次に、金の「取得費」について説明します。
取得費とは、簡単にいえば購入金額です。
ただし、取得費には、金の購入金額だけでなく、購入時に業者に支払った手数料も含めます。
なお、説明したように取得費は、消費税を含めた金額で計算します。
金の譲渡所得金額の具体例
※金額は消費税込み
・金地金300gを150万円で売却しました。売却手数料は、1万円でした。
・この金300gは、90万円で購入したものです。この購入時の手数料は、1万円でした。
この場合の譲渡益は、
・譲渡益=売却金額150万円-(取得代金90万円+購入手数料1万円+売却手数料1万円)
=58万円
となります。
金の費用明細
したがって、金売却時の確定申告で困らないためには、金を購入した際の費用明細(金の価格や購入手数料)をしっかり保存しておくことが必要です。
業者によっては、購入時の費用明細が、スーパーのレシートと同じ感熱紙の場合があるようです。
感熱紙も問題は、時間が経つと文字が消えてしまうことです。
購入して売却するまでの期間がわずかなら問題ありませんが、数十年後に売却ということも珍しくありません。
購入明細をしっかり保存していても、数字が見えなければ全く役に立ちません。
こういったことを防ぐには、費用明細がもし感熱であれば、コピーをとることをおすすめします。
ただし、コピーだけでは、税務署に偽造だと疑われる可能性もあります。
必ず、原本とそのコピーをセットにして保存してください。
金投資・売却|取得費が大切(相続があった場合)
相続があった場合の取得費は相続時の時価?
売却した金を自分で購入したのではなく、親が購入し、それを相続で引き継いだということもあると思います。
そのときの購入費は、どのような取り扱いになるのでしょうか。
よくある勘違いは、相続時の金の時価を取得費とするというものです。
特に、相続税を払っていれば、相続時の時価に相続税がかかったのだから、それまでの含み益はそれで精算されたと思ってもやむを得ないでしょう。
相続があった場合の取得費の取り扱い
しかし、税務上の扱いはそうではありません。
取得費は引き継ぐのです。
つまり、親の取得費を相続した人が金を売却した際に使います。
相続時の評価額が100万円でも、親の取得費が30万円であれば、取得費は30万円で計算します。
相続税と所得税は全く別なのです。
相続ではなく、贈与で金を引き継いだ場合も同じです。
贈与者の取得費を使用して譲渡益を計算します。
この点を間違えないようにしてください。
金投資・売却の確定申告|取得費が大切(不明な場合)
金の取得費が不明な場合の原則
金の購入時の費用明細が見つからないこともあると思います。
費用明細を紛失することもあるでしょう。
特に、親が何十年も前に購入した場合は、わからないのが普通だと思います。
その場合は、税務上次のように考えます。
・取得費+譲渡費用=売却収入×5%
取得費がわからないからといって、全く認められないということではないのです。
5%は何も証明するものがなくても取得費として認めてくれます。
これを「概算取得費」といいます。
つまり、売却益を95%で計算しましょう、ということです。
たとえば、金の売却収入が100万円、売却手数料1万円、取得費は不明の場合の譲渡益は、次のようになります。
・譲渡益=100万円-(100万円×5%+1万円)=94万円
ちなみに、金の場合はあまりないでしょうが、実際の取得費が5%より少額だった(売却益が95%超)としても、この規定を使うことが認められます。
金の取得費が不明な場合の対処法
売却した金の購入明細が見つからない場合、上記のように95%の売却益で税金を支払ってはもったいないですよね。
95%もの売却益なんて出ることは少ないですから。
まずは、購入先の業者に問い合わせてみましょう。
あまり古くなければ、業者に取引記録が残っているかもしれません。
業者にも記録が残っていない場合や、業者もわからない場合でも、まだ対処法はあります。
金地金は、不動産のように相場がはっきりしないというものではありません。
相場が確立されています。
金相場は毎日ニュースでも報道されていますし、新聞にも掲載されています。
したがって、たとえ購入明細がわからなくても、購入時期だけでもわかれば、そのときの金相場を調べて、それを取得費として申告しても、実務上は問題にならないでしょう。
預金通帳に購入資金の引出しのメモがあれば購入時期がバッチリわかりますが、購入時期も不明な場合もあるでしょう。
そんな場合は最後の手段です。
おおよそこの期間内で購入したと思われるところの金相場を調べ、最も低い相場を取得費として使って申告しましょう。
高いところの相場を使えば、税務署から指摘されるでしょうが、低い相場を使えば、実際にはそれよりも高い単価で購入している可能性が高いでしょうから、税務署も認めるでしょう。
金投資・売却の確定申告|税金の計算は?
金の売却益に対する税金の計算は、所有期間に応じ、次のようになります。(通常の譲渡所得に該当するの場合)
→ 金地金の譲渡による所得(国税庁)
所有期間が5年以下の場合の税金計算
所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得に該当します。
短期譲渡所得の場合は、
譲渡収入(金売却金額)-(取得費+譲渡費用)-譲渡所得の特別控除50万円
が譲渡所得なって、給与などほかの所得と合算して税金が計算されます。
※短期譲渡所得と次に説明する長期譲渡所得の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合せて50万円が限度で、短期譲渡所得の譲渡益から先に控除します。
たとえば、金の売却収入が150万円、売却手数料1万円、取得費は60万円の場合の譲渡益は、次のようになります。
・短期譲渡所得=150万円-(60万円+1万円)-50万円=39万円
所有期間が5年超の場合の税金計算
所有期間が5年超の場合は、長期譲渡所得に該当します。
長期譲渡所得は、
{譲渡収入(金売却金額)-(取得費+譲渡費用)-譲渡所得の特別控除50万円}×1/2
が譲渡所得になって、ほかの所得と合算して税金が計算されます。
※短期譲渡所得と次に説明する長期譲渡所得の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合せて50万円が限度で、短期譲渡所得の譲渡益から先に控除します。
最後の「×1/2」がポイントですね。
たとえば、金の売却収入が150万円、売却手数料1万円、取得費は60万円の場合の譲渡益は、次のようになります。
・長期譲渡所得=(150万円-(60万円+1万円)-特別控除50万円)×1/2=19.5万円
有利な売却方法は?
このように所有期間が5年超であれば、譲渡所得が半分(×1/2)になります。
したがって、この非課税枠を最大限に活かす売却方法は、(1)所有期間が5年超になったものを、(2)少しずつ毎年売却することになります。
所有期間が5年以下なら、「×1/2」が適用されません。
また、一度に売却してしまうと、50万円の非課税枠(特別控除)を一度しか使えません。
たとえば、金を10年に分けて売却すれば、50万円×10年=500万円の非課税枠(特別控除)を利用できますね。
金投資口座や金貯蓄口座の場合は?
金地金ではなく、金投資口座や金貯蓄口座などで金を運用している場合の利益は、金地金の現物の売却とは異なり、金融類似商品の収益として一律20.315パーセント(所得税および復興所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率による源泉分離課税となります。
源泉分離課税ということは、源泉徴収だけで課税が完了しますので、他の所得と合算して確定申告をすることはできません。
また、源泉分離課税の所得は、扶養親族などに該当するかどうかを判定するときの所得金額には含まれません。
→ 金融類似商品と税金(国税庁)
相続で金を引継いだ場合のさらに有利な売却方法は?
相続で引継いだ金を売却する場合、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)から3年以内に売却すれば、譲渡所得にかかる税金をさらに抑えることができます。
それは、「取得費加算の特例」を適用できる可能性があるからです。
「取得費加算の特例」は、相続で取得した財産を売却した際に、相続税の一部を取得費に加えることで、譲渡所得を圧縮して税負担を軽くできる制度です。
ただし、「取得費加算の特例」を利用するには、相続時に相続税を納めている必要があります。
相続税を支払っていない場合は、たとえ期間内に売却してもこの特例を適用することはできません。
→ 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
まとめ
今回は、金を売却の申告に必要な購入明細の保存や、相続があった場合の取得費の考え方、購入明細が見つからない場合の対処法について説明しました。
これらを確認していただき、確定申告でミスがないようにしましょう。
【こちらの記事も確認しましょう。】
・金投資・売却|同じではない税金(事業所得・雑所得・譲渡所得)
【投稿者:税理士 米津晋次】

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