毎年、企業が負担する社会保険料は増えています。
小規模な会社でも、毎月納付する社会保険料は多額になります。
社会保険料は期日までに支払わなくても、確かにすぐに業務に支障をきたす訳ではありません。
しかし、社会保険料の滞納をすると、高い利率(割合)である延滞金も納付しなければなりません。
このことは、あまり知られていません。
また、この延滞金によって、なかなか滞納した社会保険料を完納できなくて苦しむ企業が多いようです。
そこで今回は、社会保険料の延滞金について説明いたしましょう。
目次
社会保険の延滞金|社会保険の延滞金の概要
社会保険の延滞金とは
健康保険料や厚生年金保険料を支払期限までに納付せず、かつ、督促状の指定期限日(納期限から約3週間後)までに完納しないときは、納付期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じ、滞納保険料に一定の割合を乗じて計算した延滞金がかかります。
社会保険料延滞金の趣旨
社会保険料延滞金の趣旨は次のとおりです。
・社会保険料の早期の納付を促す
・社会保険料滞納者に対する懲罰的意義
・社会保険料を納付期限までに納付している者と滞納している者との不公平をなくす
社会保険料延滞金の計算方法
社会保険料延滞金の具体的な計算方法は、次のとおりです。
・納付すべき社会保険料額(1000未満切捨て)×延滞日数×割合÷365日(100円未満切捨て)
社会保険料延滞金は損金算入ができる
税金の延滞税(国税)や延滞金(地方税)は、税金の計算上損金(経費)にすることはできません。
それに対し、社会保険料の延滞金は、同じ趣旨のものでも、税金の計算上損金(経費)にすることができます。
延滞税は、納付遅滞を抑止するための経済的負担ですので、損金算入を認めると、税負担の減少を通じその抑止効果を減殺することになります。
そのため、法人税法では、その損金算入を認めていません。
なお、損金計上できない範囲については、限定列挙の形をとっています。
その限定列挙された中に社会保険延滞金は含まれていないため、損金算入は認められるのです。
社会保険料延滞金の勘定科目
社会保険料延滞金の勘定科目は、「雑費」「雑損失」などで処理すればいいでしょう。
社会保険料延滞金は、税金の延滞税・延滞金と異なり、損金処理が可能ですので、損金不算入の扱いで「租税公課」又は「法人税等」の勘定科目で処理することが一般的な税金の延滞税・延滞金とは勘定科目を分けた方がわかりやすいでしょう。
社会保険の延滞金|延滞金の利率
納付期限から最初の3ヶ月間の社会保険料延滞金の利率
原則
平成27年1月1日以降の社会保険料滞納期間に対応する延滞金の利率(割合)は、納期限の翌日から3月を経過する日までの期間については年「7.3%」です。
特例
社会保険料延滞金の利率(割合)は市場金利と比較して高すぎるとの指摘により、市場金利が低い場合には、延滞金の利率も下がるような仕組みが設けられています。
社会保険料納期限の翌日から3月を経過する日までの期間についての延滞金の割合は、「特例基準割合+1%」が原則割合よりも低い場合には、次の利率(割合)が適用されます。
・平成27年1月1日以降:年2.8%
なお、特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として、各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に年1%の割合を加算した割合をいいます。
納付期限から3ヶ月を超える期間の社会保険料延滞金の利率
原則
平成27年1月1日以降の社会保険料滞納期間に対応する延滞金の利率(割合)は、納期限の翌日から3月を経過する日を超える期間については年「14.6%」です。
特例
こちらも、社会保険料延滞金の割合は市場金利が低い場合には、延滞金の利率(割合)も下がるような仕組みが設けられています。
社会保険料納期限の翌日から3月を経過する日を超える期間についての延滞金の利率(割合)は、「特例基準割合+7.3%」が原則割合よりも低い場合には、次の利率(割合)が適用されます。
・平成27年1月1日以降:年9.1%
たとえ、この特例が適用されたとしても、現在の市場金利からしてかなり高いです。
もし、原則の14.6%が適用されれば、消費者金融に近いほど高い利率といえます。
なぜ社会保険延滞金の利率がこれほど高いかとえば、社会保険延滞金には、罰則的な意味もあるからです。
社会保険の延滞金|延滞金を安くする方法
社会保険料を納付することが延滞金を安くする1番の方法
先に説明したように、社会保険延滞金の利率(割合)はかなり高いものになっています。
したがって、このような社会保険延滞金を安くする一番の方法は、何といっても社会保険料を早く納付して、延滞税が増えることを止めることです。
たとえ、銀行からの借金返済を後回しにしてでも、借入をしてでも、社会保険料を優先して納付しましょう。
滞納保険料全額が納付できなくても、たとえ一部でも保険料を納付すれば、その保険料に対応する部分については、延滞金が増えることがなくなります。
なお、社会保険料延滞金と税金の延滞税・延滞金の利率は、ほぼ同じです。
社会保険延滞金の免除
延滞につき、災害などやむをえない事情があると認められる場合は、社会保険料延滞金は徴収されません。
まとめ
今回は、社会保険料の延滞金について説明いたしました。
このように、社会保険料の延滞金も税金の延滞税と同様に常識的な金利よりもかなり高く計算され、納付が遅れれば遅れるほど延滞金はどんどん増えていきます。
繰り返しますが、たとえ銀行への借入返済を遅らせてでも、借入をしてでも、高い延滞金がかからないように、社会保険料を優先して支払ってください。
それが、社会保険料の滞納から早く抜け出す近道になります。