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年末調整と確定申告|共通点と相違点・違い、確定申告が義務・すべき場合

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確定申告  所得税の精算手続きとして、年末調整確定申告があります。

 しかし、年末調整ではできないものがあったり、年末調整を受けても確定申告しなければならない場合があったりと複雑です。

 そこで今回は、年末調整と確定申告の関係について、共通点と相違点や確定申告しなければならない場合、確定申告すべき場合を説明いたします。

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年末調整と確定申告|共通点と相違点・違い

年末調整と確定申告の共通点

 年末調整も確定申告も、年間の所得税の過不足を精算をする手続きです。したがって、所得税の納付額が足りない場合には、所得税を追加で納めます。

 逆に、所得税を納付し過ぎていた場合には、所得税が還付されます。

年末調整と確定申告の相違点・違い

対象となる所得の相違・違い

 所得税法において、所得は10種類に区分されています。

 年末調整の対象となるのは、そのうち給与所得のみです。
 つまり、サラリーマンやパート、アルバイトが年末調整の対象になります。


 一方、確定申告は、事業所得、不動産所得、譲渡所得、一時所得など、すべての所得が対象になります。

 つまり、すべての人が確定申告の対象になります。

精算する時期の相違・違い

 年末調整は、その年の最後の給与又は賞与が支払われるときに所得税が精算されます。

 多くの会社は12月中の給与又は賞与が支払われる際に所得税の精算がされますが、会社によっては翌年1月の給与で所得税の精算がされます。

参考:→年末調整の還付金|いつもらえるのか、還付方法、不足徴収の理由

 それに対し、確定申告は、翌年の2月16日から3月15日(所得税が還付される確定申告の場合は、翌年1月4日から3月15日)に申告をし、その結果、所得税の追加納付の場合は、翌年3月15日まで(振替納税の場合は翌年4月20日ごろ)に精算し、所得税の還付がされる場合には、申告後1ヵ月から2ヵ月程度で還付による精算がされます。

前払いと後払いの相違・違い

 年末調整は、1月から12月まで毎月給与から天引きした所得税について、12月又は1月に過不足を調整する仕組みのことです。
 従業員からみれば、前払いした所得税を精算することになります。

 それに対して確定申告書は、原則として1年間の所得税を翌年の3月又は4月までに支払うことで精算します。
 つまり、所得税が後払いになることが多いのです。

 ただし、所得税の予定納税制度や源泉徴収制度がありますので、年間所得税が少なく済んだ場合には、結果的に前払いの精算となることもあります。

確定申告でしか受けられない控除がある

 年末調整で受けられる控除としては、次のものがあります。
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・障害者控除
・寡婦(寡夫)控除
・勤労学生控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・基礎控除
・住宅借入金等特別控除(2年目以降)

 しかし、次の控除は、確定申告でしか控除を受けることができません。
・医療費控除
・雑損控除
・寄附金控除
・特定支出控除
・住宅借入金等特別控除(初年度)  
・外国税額控除


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年末調整と確定申告|確定申告しなければならない場合

給与の年間収入金額が2,000万円を超える人

 給与の年収が2000万円を超える人は、所得税法の規定により年末調整をしてもらえません。
 したがって、会社から配布される源泉徴収票をもとに、必ず自分で確定申告をする必要があります。

2ヶ所以上から給与を受けている人

 アルバイトなど副業をして、結果的に2ヶ所以上から給与の支払いを受けている人は、確定申告が必要です。
 主の勤務先の給与については、会社で年末調整をしてくれます。

 勤務先がその1ヶ所だけなら、年末調整で所得税の精算が済んでいますが、2ヶ所目以上の給与所得については、確定申告をしないと、すべての給与所得に対する所得税の精算ができません。

給与所得以外の所得がある場合

 年末調整だけで確定申告が不要な人は、1ヶ所の給与収入しかない人です。

 副業のアフィリエイトで所得があったり、不動産賃貸収入があったり、不動産や株式等の売却益があったり、給与所得以外に所得がある場合には、それらの所得について所得税の精算が完了していませんので、確定申告が必要になります。

 ただし、サラリーマンについては、年末調整を受けた給与以外にほかに所得があっても、その他の所得等が年間20万円以下であれば、確定申告をしなくてもいいという規定があります。
(※住民税の申告は、20万円以下でも必要です。)

年末調整に間違いがあった場合(所得税が不足する場合)

 1ヶ所の給与所得しかなく、年末調整を受けた人であっても、会社へ提出した年末調整の申告書に間違いがあり、所得税額が不足する場合には、確定申告をして訂正しなくてはなりません。

 たとえば、配偶者の所得が38万円(給与収入が103万円)以上あったのに配偶者控除を受けた場合や、扶養控除の対象にした子にアルバイトなどで年間103万円以上の給与収入があった場合が該当します。

年末調整を受けていない場合(所得税が不足する場合)

 勤務先に「扶養控除申告書」を提出しない場合は、年末調整による所得税の精算は行われません。
 所得税が過払いの状態になっている場合が多いですが、中には給与等から控除された所得税では年間所得税が不足になる場合もあります。
 そのような場合は、確定申告をして、所得税の不足分を支払う必要があります。

 実際には、所得税が不足しているかどうかわかりませんので、確定申告をして、所得税が不足していれば追加納付をし、所得税が過払いになっていれば還付を受けることになります。


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年末調整と確定申告|確定申告するといい場合

確定申告でしか受けられない控除を受ける場合

 上記でも説明しましたように、医療費控除、雑損控除、寄附金控除、特定支出控除、住宅借入金等特別控除(初年度)、外国税額控除は、年末調整では控除を受けることはできず、適用を受けるためには、確定申告が必要です。

年末調整で控除できるものをしなかった場合

 年末調整で控除を受けることができる控除などを、うっかり記入忘れした場合などは、当然その控除を受けていません。
 そんな場合は、確定申告をして控除を受ければ、所得税の還付を受けることができます。

 この場合に該当するのは、次のような場合です。
・保険料控除申告書を提出しなかった場合
・給与から天引きされているほかに自分で払った国民年金や国民健康保険を申告しなかった場合
・住宅借入期等特別控除申告書(2年目以降)を提出しなかった場合
・生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書などの証明書の再発行が間に合わずに控除が受けられなかった場合

年度の途中で退社し、そのままどこにも就職しなかった場合

 年の途中で退職し、その年にそのままどこにも就職しなかった場合は、給与から天引きされた所得税が過払いになっていることが多いです。
 その場合も、確定申告をすれば所得税の還付を受けられます。

年末調整に間違いがあった場合(所得税が過大だった場合)

 年末調整を受けていても、会社へ提出した扶養控除申告書などに間違いがあり、所得税が過払いになっている場合は、確定申告で訂正をして、所得税の還付を受けることができます。

 これに該当する場合には、次のようなケースがあります。
・扶養家族が増えたのに、扶養控除申告書に追加記入を忘れた場合
・結婚して奥様を扶養しているのに、扶養控除申告に追加記入を忘れた場合
・奥様が配偶者特別控除を受けられる所得範囲内だったのに、申告を忘れた場合

年末調整を受けていない場合(所得税が過大だった場合)

 年の途中で入社して、前職の源泉徴収票を提出しなかったことなどが理由で、会社に年末調整をしてもらえなかった場合は、所得税が過払いの状態になっていることが多いです。

 この場合は、確定申告で前職の源泉徴収票と今の勤務先の源泉徴収票で年間の正しい所得税を計算し、過払いになっている所得税の還付を受けることができます。

株などの取引で損が出て、繰越控除や損益通算をしたい人

 株式などの投資をして損失を出した場合や、不動産所得で赤字を出した場合は、確定申告の義務はありません。

 しかし、確定申告をすれば、株式の売却損(譲渡損失)の繰越控除手続きをして、来年以降の売却益(譲渡益)で相殺をすることができますし、不動産所得の赤字と給与所得との損益通算をして所得税の還付を受けることができます。


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まとめ

 今回は、年末調整と確定申告の関係について、共通点と相違点や確定申告しなければならない場合、確定申告すべき場合を説明いたしました。

 今回の記事を参考に、確定申告の義務のある場合は忘れずに確定申告をして、後から税務署に指摘され、追加納税だけでなく、加算税や延滞税を納めることがないようにしてください。

 確定申告すると有利な場合は、忘れずに確定申告をして、税金の払い過ぎにならないようにしましょう。

【投稿者:税理士 米津晋次

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※お断り

※記事の内容は、投稿日現在の税法等の規定によっております。税制改正等により最新情報でない場合もありますので、ご了承ください。

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