税金の知恵袋

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税金の滞納で差し押さえ!どうすればいい?給料、銀行預金、クレジットカードはどうなる?

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 さまざまな事情で税金を期日までに納付できないこともあるでしょう。うっかり納付を忘れることもあるかもしれません。役所から督促状などが届いても、見ないでほっておく人もいるようです。
 そうすると、税金の差し押さえが行われます。給料や預金が差し押さえされて驚くこともあります。


 そこで今回は、税金を滞納した場合の差し押さえについて説明しましょう。

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税金の差し押さえがされるまで(滞納はいつまで待ってくれる?)

税金の滞納

 各税金には、それぞれ決まった納付期限があります。
 所得税の確定申告でしたら、翌年の3月15日でしたね。

 この納付期限をたった1日でも遅れると、「滞納」になります。

 滞納すると、日割りで延滞税(又は延滞金)という利息が発生します。

  → 滞税とは?利率は?延滞税を安くする方法はあるのか?

 なお、国民健康保険の滞納があれば、それも税金の滞納として扱われます。

督促状の送付

 滞納が発生すると、国税の場合は滞納から50日以内、地方税の場合には、滞納から20日以内に督促状を送付することになっています。
 青色や白色の封筒で送付する役所が多いようです。

 督促状を送付せずにいきなり差し押さえをすることはありません。

電話、訪問などの催告

 国税(所得税、消費税等)も地方税(住民税、固定資産税等)も、督促状が発布されて10日が経過したら差し押さえができます。

 差押えや公売などの手続きを決めている国税徴収法などに、督促状を発した日から10日を経過した日までに完納しないときは滞納者の財産を「差し押さえなければならない」と書かれているからです。

 しかし実際には、差し押さえをする前に、電話をかけたり、訪問したりすること(催告)が多いようです。


財産差押予告書

 催告の電話にも出ず、役所が訪問しても税金の滞納者に会えなかった場合には、「財産差押予告書」が送付されてくることがあります。
(送付されずに差し押さえになることもあります)
 そこには、指定納付期日が記載されています。その日までに滞納税金を納付しないと差し押さえを実行する、ということです。

 黄色の封筒で送付されてくることが多いようです。注意ということです。

差押通知書、最終催告

 財産差押予告書の指定納付期日までに滞納税金の納付がない場合には、「差押通知書」「最終催告書」が送付されてくることがあります。

 先ほども説明しましたが、すでにいつ差し押さえがあってもおかしくない段階に入っていますので、この「差押通知書」や「最終催告書」の送付がなく、いきなり差し押さえが実行されることもあります。

 赤色の封筒で送付する市町村が多いようです。もう待てないということですね。

財産調査

 財産の差し押さえが必要となった場合、財産を差し押さえるために、事前に税金滞納者の銀行口座・不動産などを調べます。

 国税の場合は、国税庁の「徴収職員」、地方税の場合は地方自治体の「徴税吏員」が財産調査を行います。

 個人情報保護法違反になるのではないか、と思う人もいるかもしれませんが、滞納税金差し押さえのための財産調査は、国税徴収法に定められた権限ですので、個人情報保護法に抵触しません

 財産調査に基づき、例えばサラリーマンであれば勤務先から支払われる給与や、預金口座から差し押さえようとします。

 財産調査は税金滞納者自身だけでなく、勤務先や金融機関なども徹底的に調査されます。
 財産調査で調べるのは、主に次のものです。

・給料
・自動車の有無
・銀行口座(取引の詳細も調査されます)
・不動産謄本の入手
・生命保険(解約返戻金など)
・売掛債権など

 なお、原則として、差し押さえするのは税金滞納者本人の財産です。

差し押さえの実行

 国税も地方税も、督促状が発布されて10日が経過したら差し押さえができます。
 民事債権と異なり、税金については、裁判所の差し押さえ許可は不要です。当然、違法ではありません。
 国税徴収官などは、税金の滞納に関しては、とても強力な権限をもっているのです。

 役所もただ納税を待っているだけだと時効になりますから、その前に差し押さえを実行するのです。

 予告なく差し押さえする場合もあれば、「差押予告通知書」を簡易書留で郵送して期日を指定する場合もあります。
 そして、期日までに滞納税金を全額納付しないと、差し押さえが行われます。

 給与の差し押さえがされた場合には、簡易書留で市税事務所から「差押通知書」が届きます。

 預金口座などを差し押さえた場合には、「差押調書」が届きます。

 →参考:税金にも時効がある?

差し押さえの対象にならないもの

 ただし、滞納者の全ての財産が滞納税金の差押え対象となる訳ではありません。

 国税徴収法第75条では、生活や営業に欠くことができない財産は、差し押えることができないとされているからです。

 たとえば、次のようなものは、差し押さえの対象にはなりません。

・衣服・寝具・家具・台所用具・畳及び建具・生活に必要な3月間の食料及び燃料
・個人事業者の場合、収入を得るために必要な道具(農業のための農機具や、漁業のための船や網など)、商品を除く業務に欠くことができない器具、実印など
・給与の一部


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税金の差し押さえにあったらどうするか?

 税金の差し押さえがあったら、まず、どの役所のどの税金についての差し押さえなのかを確認しましょう。

税金関係の役所はどこか

 税金関係の役所には、次のところがあります。

税務署、都道府県税事務所、市区町村役場

 税務署、都道府県税事務所には、管轄があります。
 税務署でもどこの税務署なのか、どこの都道府県税事務所なのかを調べましょう。

 引越し等をしている場合には、引越し前の所轄かもしれません。
 督促状が届いているはずですので、その封筒を見るのが確実です。

 差し押さえが執行された翌日以降に、金融機関からの手紙は届いていませんか?通帳の住所変更がされてなければ、届きませんが…。
 そこに「○○市役所から差押通知書を受け入れましたので、強制払い戻しをしました。問合せは○○市役所までどうぞ」といった主旨のものが書かれているはずです。

何税なのか

 ひとつの役所でも、多くの種類の税金を徴収しています。滞納していたのは、どの税金なのかを確認しましょう。
 これも、届いている督促状に記載があるはずです。

 個人で差押処分が多いのは、
・ 住民税(市区町村役場)
・ 固定資産税(市区町村役場)
・ 国民健康保険料(市区町村役場)
・ 自動車税(県税事務所)
などです。

 その中でも、住民税が一番多いようです。住民税は翌年に納付しますので、今年失業なので急に所得が下がると納付できない人が発生しやすいからでしょう。

 所得税は、サラリーマンなら給与から天引きされていますので、滞納はありません。

 法人の場合は、消費税(税務署)が多いです。

滞納額はいくらなのか

 どこの役所のどの税金かがわかったら、いくら滞納しているのかを確認しましょう。これも督促状でわかるはずです。

 もし、わからなければ、その役所に問い合わせてください。

 なお、本来払う税金だけを払えばいいのではありません。
 納税が遅れているのですから、延滞税(地方税は延滞金)についても支払う義務があります。

 →参考:延滞税とは?利率は?延滞税を安くする方法はあるのか?

相談に行く

 役所が差し押さえをしたのは、督促状などに返事がなく、この先確実に支払ってくれるのかわからないからです。

 まずは、役所へ電話をしてください
そして、預金通帳や給料明細、家計簿など、現状がわかる資料をもって、その役所へ相談に行ってください


 役所の人は、そのように相談に来てくれた人対応してくれるはずです。

 分割納付など返済計画について一緒に考えてくれるでしょう。
 ただし、分割納付を認めくれてくれる場合には、誓約書の記載を求められるようです。

 分割納付の約束したら、それ以降の分割納付は必ず守ってください。納付の約束を破った場合、今度は予告なしで給与差押となるかも知れません。

減免制度や納税猶予制度を確認

 滞納者の収入状況などから支払いが難しい場合は、申請することで減免措置を受けられるものがあります。該当するものがないかを確認しましょう。

 住民税や国民健康保険には減免制度がある市町村がほとんどです。

 また、病気や失業などの理由があって納税できない場合には、一定期間納税を猶予する制度もあります。


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財産の差し押さえ(滞納するとどうなる?)

給与の差し押さえ

 役所が税金の差し押さえをする場合に、サラリーマンなら最初に行うのが給与の差し押さえのことが多いでしょう。


勤務先を役所は知っている

 昨年末時点での勤務先は、少なくとも市区町村役場はわかっています。勤務先から、給与支払報告書が提出されているはずですから。
 給与を差し押さえることが、一番確実で、役所の手間も少ないからでしょう。

 勤務先へ給与の差し押さえの通知(給与等差押事前通知書)がいき、それに従って、滞納者の給与から滞納税金を控除させ、納税させます。

給与の差し押さえについては、限度額がある

 ただし、給与債権の差し押さえについては、取立限度額(差押禁止額)があります

 その計算方法は、以下のとおりです。(国税徴収法76条1項)

・取立限度額=(給与総支給額-所得税・住民税・社会保険料-本人10万円-4.5万円×家族人数)×0.8

 給与の差し押さえができるのは、1/4までではないか、と疑問をもつ人がいるかもしれません。それはあくまでも民事執行上の差し押さえの場合です。

 給与支払い義務者には納税指導をすることが役割として決められているので、社長や上司に呼び出されて、納税指導を受けることになるでしょう。
 あなたの会社での信用は大きくダウンすることになります。

 なお、給与債権は、預金口座の差し押さえと違って、1回の差押の効力が継続します。
 つまり、税金の滞納がある限り、毎月、上記の計算が適用されて取り立てられるということです。

預金口座の差し押さえ

 税金の滞納額について、給料の差し押さえで回収できそうもない場合は、預金口座の差し押さえが行われるでしょう。「サシオサエ」と通帳に記載されます。


差し押さえられる金額

 預金口座の差し押さえで、差し押さえられる金額は次のものです。

・滞納税額≧預金口座残高 なら、口座残高全額が徴収され、預金口座の残高は0円になります。

・滞納税額<預金口座残高 なら、差額は口座に残ります。

差し押さえられた預金口座は入出金できないのか

 預金口座が差押えられたのではなく、口座の中のお金が差押さえられたのであって、その残高が引き落とされるだけです。その後に入金されたものに対してまで、差し押さえの効力は及びません。
 また、預金口座が凍結される訳でもありません。

 1回の預金口座差し押さえでまだ滞納があれば、また差押えしてくる可能性があります。

次の給料の振込も差し押さえされるのか

 預金払戻請求権という「債権」が差し押さえられたのです。預貯金の払戻し請求権の差し押さえなのです。
 したがって、その後預金口座に入金されたものが自動的に取り立てられるわけではありません。

 ただし、滞納税金の支払が完了しないと、また預金口座を差し押さえるでしょう。

 給与の振込を全額差し押さえるのが違法ではないかと思う方もいるでしょう。確かに、給与の差し押さえについては、限度額がありましたね。

 しかし、給与が口座に振り込まれた段階で、その振込額は給与ではなく預貯金として扱われますので、違法ではありません。

差し押さえられたものは返金されない

 分割納付をお願いに行く予定ですが、差し押さえられた金額は返金されないのでしょうか。
 残念ながら、一度預金口座を差し押さえて徴収されたものは返金されません。

差し押さえ口座以外の預金口座も差し押さえられるか

 まずは、税金の振替口座や還付税金の還付先として指定した口座から差し押さえられるでしょう。

 その口座の差し押さえで滞納税額全額が徴収できなかった場合、役所はほかの金融機関口座を探すでしょう。金融機関口座を調べられる権利が、自治体や税務署にはあるからです。

 金融機関は、役所から税金滞納のための問い合わせがあれば、知らせなければなりません。
 基本的に貴方の取引範囲内と予想される地域の金融機関の支店に事前調査が入ります。

 ゆうちょ銀行は、本店に問い合わせれば、日本全国どこの口座でも回答するようです。

口座差し押さえ情報はブラックリストに登録される?

 預金口座差し押さえにより、預金者がブラックリストに登録されたりすることはありません。

 ほかの銀行で口座開設もできますし、クレジットカード申込みや融資の申込み時の審査でも差し押さえ情報がマイナスになることはありません。ほかの銀行やカード会社では、差し押さえ情報はわかりませんから。

 ただ、その差し押さえられた口座の銀行に住宅ローンや事業資金の融資を申込んだ場合には、過去に差し押さえがあったことが審査でマイナスに影響するでしょう。

不動産の差し押さえ

 不動産の差し押さえは、法務局への差押登記をすることにより行われます。


 そして、滞納者に差押通知書が送付されます。

 なお、一旦差押登記がされると、その後に滞納税金を全額納付しても、登記簿に差し押さえ事実が残ってしまいます。

 差押登記を行った後、一定期間で滞納税金が納付されない場合には、インターネットオークションや入札を利用した公売を実施して税金に充てる現金に換金します。

現金や動産の差し押さえ

 口座の差し押さえ、給与の差し押さえができないと、いよいよ自宅へやってきます。事前の予告などなく、いきなり役所の執行官が来ます。

 捜索については、裁判所の令状は不要ですし、滞納者本人の同意もいりません。

 自宅に捜索がはいった場合、現金・自動車・高級時計・宝石・テレビ・ピアノ・高級家具その他換金が可能な財産が差押される可能性があります。



 自動車やバイクについては、徴税吏員が占有後すぐに搬出をせず、「タイヤロック」をして運行・使用を制限することで、自主的な納税を促すことが多いようです。
 それでも納税されない場合は、自動車等を搬出し、公売を行って納税に充てます。

生命保険の解約返戻金の差し押さえ

 生命保険には、いろいろなものがありますが、解約すると解約返戻金がもらえるものも、滞納税金の差し押さえ対象となります。
 掛け捨ての生命保険は、差し押さえの対象にはなりません。


 どうやって滞納者が生命保険に加入していることを役所は知るのでしょうか。

 預金口座を調査しますから、その預金から保険料が引き落とされていることでわかるでしょう。自宅捜査があれば、保険証書でもわかることになります。

 役所は、加入している生命保険会社に対して、差し押さえをします。

 生命保険が差し押さえられると、その保険契約の給付金(入金給付金や手術給付金など)も滞納税金に充てられてしまいます。

個人事業者や法人の場合は、売上債権の差し押さえも

 商売をしている人や法人(会社)の場合は、売上代金で未回収のような売上債権があることが多いです。月末締めで翌月末日払いといった約束で取引している場合です。


 そのような売上債権がある場合、その売上債権までも差し押さえてきます。売上債権まで差し押さえられると、商売を続けることが困難になります。

自己破産した場合

 消費者金融やクレジットの借金は、最終手段として自己破産により免責されますが、税金は自己破産しても免責されません。
 法律上の優先順位は税金の方が上だからです。

 なお、法人が破産した場合には、滞納している税金は免除されます。


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まとめ

 今回は、税金の差し押さえについて説明いたしました。ほかの返済よりも優先して税金を納める必要があります。

 役所から税金の督促状が届いたら差し押さえされる前に、とにかく一度相談に行ってください。それが一番です。




【投稿者:税理士 米津晋次

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