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確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|取得費、各種特例、重複適用など

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不動産や株式を売却した場合の所得は、譲渡所得となり、原則として確定申告が必要です。

譲渡所得の確定申告は、とても複雑で大変です。
プロである税理士でも間違いも起こしやすいです。

そこで今回は、譲渡所得の確定申告での確認点・注意点についてご紹介します。

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目次

確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|取得費等

相続や贈与により取得した資産の取得費

◆相続や贈与により取得した資産の取得費は引き継がれる

相続や贈与により取得した資産を売却した場合の取得費は、相続や贈与の際の評価額ではありません。

死亡した人や贈与した人が、その資産を購入したときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。

つまり、前の所有者の取得費を引き継ぐということですね。

なお、業務に使われていない土地建物を相続や贈与により取得した際に相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含めることができます。

◆相続や贈与により取得した資産の取得費には不動産取得税等を加算できる

相続や贈与により取得資産を売却(譲渡)した場合、その取得費には、相続や贈与の際に支出した次のものを加算できます。
・不動産取得税
・登録免許税
・名義書換手数料

ただし、概算取得費(5%)を適用している場合には、これは適用されません。

これは、従来は認められていなかったのですが、平成27年以降の相続・遺贈について認められるように改正されました。

土地・建物を一括して取得している場合の取得費

◆通常は、「建物の標準的な建築価額表」に基いて土地・建物を区分する

土地と建物を同時に取得し、契約書にそれぞれの価額が明示されていない場合、譲渡所得の計算では、土地・建物に価額を区分しなくてはなりません。

建物については、減価償却費相当額の計算が必要です。

土地と建物の価格区分によりその金額が変わり、取得費も異なってしまうからです。

土地と建物が区分されていない場合は、「建物の標準的な建築価額表」に基いて区分しますが、もし契約書に消費税額の記載があった場合には、次のような計算により土地・建物の価額を区分しなければなりません。
・消費税額を消費税率で割り戻して建物の取得費を計算する
建物には消費税がかかりますが、土地には消費税がかかりません。
したがって、契約書に記載されている消費税額は、建物分だといえるからです。

◆消費税額から建物の取得費を計算する具体例

たとえば、平成5年に取得した土地・建物の売買契約書に消費税額が30万円と記載されていた場合、平成5年当時の消費税率は3.0%でしたので、建物の価額は次のようになります。
・建物の価額=30万円÷3.0%+30万円=1030万円(消費税込み)


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確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|損益通算

損益通算とは

損益通算とは、2種類以上の所得があり、1つ以上の所得が赤字で他の所得が黒字という場合に、黒字の所得から赤字の所得を差し引いて計算を行うことをいいます。

なお、損益通算が適用できるのは、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の損失に限られます。

したがって、雑所得の損失については、損益通算はできません。

ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算

◆平成26年3月31日以前のゴルフ会員権の譲渡

ゴルフ会員権の譲渡損失(売却損)は、平成26年3月31日までであれば、ほかの所得と損益通算できました。

◆平成26年4月1日以降のゴルフ会員権の譲渡

平成26年4月1日以降にゴルフ会員権の売却をし、譲渡損失(売却損)が発生した場合、その譲渡損失は損益通算の対象とならなくなりました。


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確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|交換・買換え特例

固定資産の交換の特例

◆固定資産の交換の特例概要

固定資産の交換特例とは、交換により取得した資産を、交換により譲渡した資産の交換直前の用途と同じ用途に供するなど一定の要件を満たす固定資産の交換については課税されない制度です。

◆同一用途の判定

固定資産の交換の特例の条件として、譲渡直前の用途と同一用途に供すること、というものがあります。

この同一用途に供したかどうかの判定は、登記簿上の地目でするのではありません。

その土地の現況及び利用状況によって同一用途に供したかによって判定します。

◆宅地の判定

現況が青色駐車場などで建物の敷地として利用されていない場合でも、次の条件を満たす場合には、宅地として取り扱うことができます。
・その土地が市街地内にある
・周辺の土地の利用状況や、その土地の現況・利用状況からみて、いつでも建物を建設できる状態である

特定のマイホーム買換え特例の譲渡資産の対価の額(売却代金)の制限

特定のマイホームを買い換えたときの特例の適用要件として、譲渡資産の対価の額(売却代金)の制限があります。

この制限額は、税制改正によって縮小されていますので注意が必要です。

◆特定のマイホーム買換え特例の概要

特定のマイホーム買換え特例とは、マイホームを売った金額より、買換えたマイホームの取得金額の方が大きければ課税されないという制度です。

この特例を受けた場合は、譲渡資産に対する譲渡所得税は買換え資産に引き継がれることになります。

◆平成23年分から24年分

譲渡資産の対価の額が2億円以下であること

◆平成25年分

譲渡資産の対価の額が1億円5千万円以下であること

◆平成26年分以降

譲渡資産の対価の額が1億円以下であること

居住用財産の軽減税率の特例の重複適用

◆居住用財産の軽減税率の特例概要

マイホームを売って一定の要件に当てはまるときは、所得税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができる制度です。
・譲渡所得金額が6000万円以下の部分:税率10%
・譲渡所得金額が6000万円超の部分 :税率15%

◆居住用財産の軽減税率の特例との重複適用はできない

特定のマイホーム買換え特例と、居住用財産の軽減税率の特例を、重複適用することはできません。


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確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|居住用譲渡3000万円控除

居住用譲渡3000万円特別控除特例の概要

居住用譲渡3000万円特別控除特例とは、マイホームを売却したことによる所得(利益)が3,000万円以内なら、その譲渡所得に対して所得税が課税されない制度です。

居住用財産の軽減税率の特例との重複適用

居住用財産の3000万円特別控除と、居住用財産の軽減税率の特例とは、重複して適用することができます。

住宅ローン控除との重複適用

◆住宅ローン控除の概要

住宅ローン控除とは、マイホームを一定条件のローンを組んで購入したり、省エネやバリアフリーなど特定の改修工事をしたりした場合に、年末のローン残高に応じて一定の所得税が免除(税額控除)される制度のことです。

【詳細】→確定申告で住宅ローン控除|概要、適用条件、手続き、必要書類など

◆居住用3000万円特別控除と住宅ローン控除の重複適用はできない

居住用財産の3000万円特別控除と、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、重複して適用することはできません。

どちらか一つの選択になります。


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確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|空き家特例


空き家3000万円控除特例の概要


相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、その家屋と敷地を譲渡した場合には、その譲渡所得から3,000万円を特別控除する制度です。

【詳細】→相続した空き家を売却すると3000万円まで非課税になる要件・税金軽減額


適用条件の注意点

◆建物と土地の両方を取得が条件

空き家3000万円控除の特例は、相続又は遺贈により、被相続人が居住していた建物とその敷地の両方を取得した個人が受けられます。

したがって、被相続人が居住していた建物のみ取得した個人や、被相続人が居住していた建物の敷地のみ取得した個人は、空き家3000万円特別控除特例を受けることはできません。

◆相続直前に老人ホームに入居していた場合

被相続人が相続直前に老人ホームに入居していて、既に自宅建物を居住の用に供していなかった場合には、空き家300万円特別控除の特例を受けることはできません。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例との重複適用

◆相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例とは、相続等により取得した財産を、相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡をした場合には、その相続等により納付した相続税のうち、その譲渡した財産に対応する部分の金額については、その譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算することができる特例です。

◆相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例とは重複適用できない

空き家3000万円特別控除と、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例との重複適用はできません。

ただし、店舗併用住宅などの場合で、非居住用部分の譲渡のみ取得費の特例の適用を受けるときは、居住用部分については空き家3000万円特別控除の特例を適用できます。

居住用3000万円特別控除との重複適用

空き家3000万円特別控除特例と居住用譲渡の3000万円特別控除特例とは、重複適用することができます。

ただし、同一年にその両方を適用する場合には、2つの特例合わせて3000万円が控除限度額になります。



確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|平成21年・22年取得土地の特別控除



平成21年及び平成22年に土地等を取得した方の譲渡所得の特例とは


◆概要


平成21年中に取得した国内にある土地等を平成27年以降に譲渡した場合、又は平成22年中に取得した土地等を平成28年以降に譲渡した場合には、その土地等に係る譲渡所得の金額から1000万円を控除することができます。

なお、譲渡所得の金額が1000万円に満たない場合には、その譲渡所得の金額が控除額になります。

◆適用条件

平成21年及び平成22年に土地等を取得した方の譲渡所得の特例を受けるには、次の条件を満たしていることが必要です。

(1)平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得したこと。
(2)平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡し、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること。
(3)親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと。
(4)相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済、所有権移転外リース取引により取得した土地等でないこと。
(5)譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の特例など他の譲渡所得の特例を受けないこと。

◆添付書類

この平成21年及び平成22年に土地等を取得した方の譲渡所得の特例の適用を受ける場合には、確定申告書に次の書類の添付が必要です。

(1)譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用] (2)土地等の登記事項証明書や土地等を取得したときの売買契約書のコピーなどで、譲渡した土地等が平成21年又は平成22年に取得されたものであることを明らかにする書類

平成21年・22年取得土地の特別控除特例の適用を忘れない

平成21年取得土地等については平成27年分以降の確定申告で、平成22年取得土地等については平成28年分以降の確定申告で、平成21年・22年取得土地の特別控除特例の適用を忘れないようにしましょう。


確定申告|譲渡所得の確認点・注意点|相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

税制改正がありましたので、相続開始の日によって、取得費加算額が異なりますので、注意が必要です。

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例とは

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例とは、相続等により取得した財産を相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡をした場合には、相続等により納付した相続税のうち、その譲渡した財産に対応する部分の金額については、その譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算することができる制度です。

平成26年12月31日以前相続開始の場合

◆土地等を譲渡した場合

・確定相続税額×(相続等により取得したすべての土地等の相続税評価額)÷(その者の相続税の課税価額(債務控除前))

◆土地等以外の財産を譲渡した場合

・確定相続税額×(譲渡した資産の相続税評価額)÷(その者の相続税の課税価額(債務控除前))

平成27年1月1日以降相続開始の場合

・確定相続税額×(譲渡した資産の相続税評価額)÷(その者の相続税の課税価額(債務控除前))




まとめ

今回は、譲渡所得の確定申告での確認点・注意点についてご紹介しました。

譲渡所得は本当に複雑です。
間違えると、多額の所得税追加納税をしなくなることもあります。

今回の記事を参考に、再確認してください。


【投稿者:税理士 米津晋次

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