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退職日は月末と月末1日前とどちらが有利?|月末1日前が有利って本当?

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退職

退職するのは決めたけど、いつを退職日にすればいいのか、悩む方が多いようです。

また、会社側も退職日をいつにすれば有利なのか判断に困っているようです。

インターネット上では、月末1日前にするのが有利だという情報が多いですが、本当でしょうか。

そこで今回は、退職日を月末1日前にすると本当に有利なのか確かめてみます。



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退職日は月末と月末1日前とどちらが有利?|月末に退職すると


社会保険の資格喪失日は、退職日ではない


社員として働いているときは社会保険に加入しています。

会社を退職すると、社会保険を脱退します。
資格喪失といいます。

社会保険の資格を喪失する日は、普通に考えれば退職日だと思いますよね。

でもそうではありません。

社会保険の資格を喪失する日は、退職の翌日なのです。


例えば、

3月31日に退職した場合、社会保険の資格が喪失されるのは、退職日の3月31日ではなく、翌日の4月1日になります。


給料からは原則として前月分の社会保険料が控除されている


社会保険料は、原則として前月分が給料から天引きされます。

したがって、3月分の給料から控除されるのは、2月分の社会保険料です。


社会保険には日割りはない


社会保険には、日割りという単位がありません。

3月15日までが社会保険で、3月16日からは国民健康保険というようなことにはなりません。

社会保険の単位は、「月」なのです。


月末に退職すると、社会保険が2か月分給料から控除される


退職時の社会保険の終わりは「資格喪失日の属する月の前月」です。


たとえば、月末である3月31日に退職すると、社会保険の資格喪失日は退職日の翌日の4月1日。

社会保険の終わりは、4月1日の属する月(=4月)の前月、つまり3月分までとなります。

したがって、会社側は、社員から3月分までの社会保険料を徴収する必要があります。


3月31日退職の場合、給料から控除される社会保険料は、通常どおりの2月分だけでは、3月分を徴収することができなくなります。

そこで3月分の給料からは、2月分の社会保険料だけでなく、3月分の社会保険料も天引きされることになります。


このように、月末で退職すると、最後の給料からは、2ヶ月分の社会保険料が控除され、手取り額がいつもより少なくなってしまいます。






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退職日は月末と月末1日前とどちらが有利?|月末1日前に退職すると


月末1日前に退職すると、資格喪失日は月末になる


社会保険の資格を喪失する日は、退職の翌日でしたね。

したがって、月末1日前が退職日の場合の社会保険の資格喪失日は、その翌日の月末となります。


例えば、3月30日が退職日の場合の社会保険の資格喪失日は、その翌日の3月31日になります。


月末1日前に退職すると、給料から控除される社会保険は1ヶ月分のみ


3月30日を退職日にすれば、社会保険の資格喪失日は3月31日。

社会保険の終わりは、3月31日の属する月(=3月)の前月分(=2月分)までですね。

会社側は、社員から徴収する社会保険料は、2月分まででいいことになります。


その結果、最後の給料である3月分から天引きされる社会保険料は、2月分だけとなります。



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退職日は月末と月末1日前とどちらが有利?|退職する側はどちらが有利か?



確かに月末1日前なら最後の給料の手取りが多くなる


上記で確認したように、確かに、月末1日前を退職日にする方が、月末を退職日にするより手取り額が多くなります。

月末日退職の場合には、2ヶ月分の社会保険料を天引きされるのに対し、月末1日前退職なら1ヶ月分の社会保険料が天引きされるだけで済むからでしたね。


この点から、月末1日前に退職するのが有利だとする情報が多くあります。

しかし、本当でしょうか?


給料から控除されなかった月分の社会保険料も結局負担することになる


月末1日前に退職すれば、給料から控除されるのは、その前月分の社会保険料まででした。

それでは、当月分の社会保険料はどうするのでしょうか。

退職した場合、厚生年金は国民年金に切り替えなければなりません。

健康保険は、国民健康保険に切り替えるか、健康保険の任意継続制度を利用するか、どちらかになります。


どちらにするにしても、当月分の社会保険料は退職後自分で払う必要があります。

決して、免除される訳ではありません。


退職後の社会保険は全額自己負担


勤務していたとき給料から天引きされた社会保険料は、じつは本来の保険料の半額です。

なぜなら、残り半額を会社が負担してくれていたからです。


しかし、退職すれば、どこも社会保険料を負担してくれるところはありません。

国民健康保険・国民年金は当然、全額自己負担です。

健康保険の任意継続制度を選択した場合も、自分で全額を負担しなければなりません。


国民年金の保険料は、厚生年金よりも安いですが、将来もらえる年金額が少額です。


退職する側は、月末1日前退職よりも月末退職の方が有利


このように考えると、退職する側からみれば、よく言われている「月末1日前退職が月末退職より有利」というよりも、逆に「月末1日前に退職するよりも、月末に退職する方が有利」ということになるのではないでしょうか。





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退職日は月末と月末1日前とどちらが有利?|会社はどちらが有利か?


会社は、月末1日前退職の場合は前月分までの社会保険の負担で済む


繰り返しますが、社会保険の資格を喪失する日は、退職の翌日でした。

したがって、月末1日前が退職日の場合の社会保険の資格喪失日はその翌日の月末となり、社会保険の終わりは、その前月分までです。

ということは、社会保険料の半額を負担する会社側は、退職の前月分まで社会保険料半額の負担をすればいいのです。


たとえば、3月30日退職であれば、社会保険の資格喪失日は、3月31日。

社会保険の終わりは、2月分までということになるのです。


会社は、月末退職の場合は当月分まで社会保険の負担が必要


一方、月末退職の場合は、社会保険の資格喪失日が翌月1日になりますので、社会保険の終了月は当月分となります。


3月31日退職であれば、社会保険の資格喪失日が4月1日になって、社会保険の終了月は3月分となります


会社側は、月末退職よりも月末1日前退職が有利


つまり、退職日がわずか1日異なるだけで、社会保険料1ヵ月分(実際はその半額)も負担が変わってきます。

会社側としては、社会保険が早く終わる月末1日前退職にした方が社会保険料の負担が少ないのです。

その意味で、会社側にとっては、退職日を月末にするよりも月末1日前退職にした方が有利と言えるのです。



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まとめ


今回は、退職日を月末1日前にすると本当に有利なのか確かめてみました。

退職する側と会社側のどちら側で判断するのかでどちらが有利かが変わりました。

特に退職する側は、最後の給料の手取り額だけで比較するのではなく、もう少し長期的な観点で比較して判断することが重要です。



【投稿者:税理士 米津晋次


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